日本の秋の食卓に欠かせないサンマですが、ここ数年は不漁の状況が定着しすっかり高値の花に。先日、今年の水揚げ量の予想が発表されましたが、やはり芳しくはなさそうです。
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北海道のサンマは今年も貧果予想
我が国における「秋の食材」の代表であるサンマ。そんなサンマの漁業において最も主力といえる「棒受け網漁」のシーズンインを控え、水産庁が来月以降日本近海にやってくるサンマの量について予測を発表しました。
それによると、今年の棒受網漁によるサンマ漁獲量は、過去最低の水揚げ量だった去年はなんとか上回るものの、過去2番目に少なかった一昨年は下回るという予想になっています。
またそれに加え、漁期を通じた漁獲物中における、体長25~30cmほどの「1歳魚」の割合は50%を下回るという予測も出ています。いわば、漁獲量が減ってしまう上にサイズも小さくなってしまうということなのです。(『令和3年度 サンマ長期漁海況予報(道東~常磐海域)』水産庁 2021.7.30)
1匹も獲れない漁も
実は北海道では、棒受網が始まる前に例年7月からサンマの流し網漁がスタートします。
今年も実施されていたのですが、こちらはなんと7月末まで1匹の水揚げもなかったといいます。これはもちろんいまだかつてない非常事態です。
サンマが主要魚種の一つである道東地区の広尾漁協では、9月末まで漁期があるにも関わらず、流し網漁を終える方針を固めたそうです。それほどの不漁はなぜ起こってしまったのでしょうか。
なぜ獲れなくなったのか
サンマ不漁の最大の原因と目されているものは「海水温の上昇」です。今年の道東地域の水温は平年より2℃ほど高くなっており、低水温を好むサンマが日本沿岸に寄ってこれない状況となっています。
このため今年のサンマのメイン漁場は、日本のはるか沖合の公海が中心となる見込みで、流し網漁や棒受網漁が行われる道東の沿岸には、ほとんど漁場が形成されない予測となっているのです。
これに加え、近海に温暖な水域を好むマイワシやサバなどが広く分布していることも、サンマが沿岸に近づかない要因のひとつと考えられています。これらの魚は生態や餌に共通点が多く、棲み分けが行われることが知られています。
またさらに、そもそもサンマは根本的に資源量が減少していると言われています。我が国でサンマが「秋の味覚の代表」とされてきたのは、長年大量に水揚げされてきたからで、今起こっているサンマの不漁は日本や中国などの乱獲が原因であるとの指摘も少なくありません。
このように、様々な要因からサンマの不漁は発生しており、一朝一夕に解決する可能性は低いと言わざるを得ません。自然環境のドラスティックな変化が起きない限り今後もサンマの不漁は続いていくはずで、いまや我々日本人は「サンマのない秋の食卓」に慣れなくてはならないのかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>