岡山にある児島湾沿岸で、観光の「四手網漁」が最盛期を迎えています。
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児島湾名物「四手網」漁
瀬戸内海が大きく陸地に食い込んだ入り江である児島湾。この沿岸で、伝統の四手網漁がいま、最盛期を迎えています。
湾の護岸に設置された四手網のそばには、漁をするための小屋が建てられています。この小屋は地元の岡山市九蟠漁協の組合員によって貸し出されており、料金を払えば誰でも四手網を楽しむことができます。
例年、温暖で漁が行いやすい7、8月の利用が最も多いそうですが、今年は新型コロナウイルスの影響で例年の7割ほどといいます。漁で獲れた魚は、小屋の炊事場で調理できるため、コロナ以前は宴会などを合わせて行うことも行われていたようです。(『児島湾沿岸 四つ手網漁が最盛期 水面に揺らめく淡い明かり』山陽新聞 2021.7.27)
四手網漁の概要
四手網漁は、十字に組んだ棒に正方形の網をつけた「四手網」でおこなわれる漁です。紐で吊るし、取り付けて海に沈め、魚をすくって採ります。漁の種類としては「敷網漁」と呼ばれるもののひとつです。
四手網の大きさはまちまちで、一人で扱えるサイズのものから、機械を使わないと引き上げられないもの、船を使って曳くものなどもあります。
漁業としての効率は低く、近代漁業ではあまり四手網漁が行われることはなくなっています。その一方で観光漁業としては重要で、上記の児島湾のほか鳥取の東郷池などでも行われています。
どんなものが捕れるのか
四手網は基本的には「下からすくう」道具のため、漁の際に上方から魚が逃げ出してしまいやすいです。そのため基本的には浅場の魚を狙う漁となっています。
児島湾では四手網漁は基本的に夜間に行われます。海面をライトで照らし、光に寄ってくる性質のあるプランクトンや、それをめがけて寄ってくる小魚を集め、さらにそれを狙って集まってきた魚を捕る、というシステムです。児島湾でよく捕れるのはスズキやコノシロ、岡山名物のママカリの原料として知られるサッパ、小型ながら味の良いイカであるベイカなどが挙げられます。
四手網漁はその効率の悪さ故に、必要以上に穫れることがなく、海底環境に影響を与えることもないので環境にとても優しいと言われています。乱獲により様々な魚の漁獲が減っているなか、今後見直されるべき漁かもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>