人気の高い高級食材でありながら、磯焼けの原因として頭を悩ませる存在であるウニ。これを駆除しがてら、様々な食材を用いて養殖する試みが全国各地で行われています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
愛媛でユニークな「ウニ養殖」の試みが
愛媛県の南端に位置する愛南町。黒潮の洗う温暖な海に面した町ですが、ここでは数年前より毒のあるウニ「ガンガゼ」が大量発生し問題となっていました。
彼らは磯の海藻を主食にしているのですが、数が増えすぎて海藻を食い尽くし、海中の砂漠化とも言える「磯焼け」を引き起こしてしまうことで、最近悪い意味で注目を浴びています。そのためしばしば捕獲され、駆除されています。
しかし、愛南町ではこのガンガゼをただ駆除するのではなく、当地の特産品である柑橘「愛南ゴールド」やブロッコリーなどの食材を飼料として与える試験養殖を行っています。通常はあまり食用にされることのないガンガゼですが、こうして飼料を与えられた個体は身入りがよくなり、可食部である生殖巣に柑橘類の風味がついて食味が良くなるといいます。
このガンガゼは、町内のレストランで提供し、ブランド化を目指すといいます。
なぜウニが柑橘や野菜を食べるの?
ウニは植物食性ですが、通常は基本的に海藻類を食べています。しかしこれは「海藻類しか食べない」のだというわけではないようで、2015年に神奈川県水産技術センターが、試験的にキャベツの葉を与えてみたところ旺盛に食べることがわかりました。これにより、ウニは陸上性の植物でも積極的に食べることがあるということが判明しました。
また同時に、食べた餌によってその食味が大きく左右されることもわかってきました。海藻を食べたウニは磯の風味が強く、そうでないものはまろやかで食べやすくなるのだそうです。柑橘類を食べさせたものは柑橘らしい香りが出るため、生臭みが和らぎ食べやすくなるといいます。
各地で養殖される「〇〇を食べたウニ」
神奈川県で上記の「キャベツウニ」が生まれて以降、全国各地で様々な食材を用いたウニの養殖が行われるようになっています。
例えば魚介類の養殖技術開発で知られる近畿大は、和歌山でみかんの皮を使ったウニ養殖技術を開発しています。また瓶詰ウニ発祥の地とされる山口県下関市では、「下関ウニベーション推進協議会」を設立し、トマトなどを飼料に用いて養殖を行っています。
変わったところでは、福岡で九州大学の職員が、裏庭に生えていた「食用に適さないほど伸びたタケノコ」をウニの飼料に用いたところ、生殖巣の甘みが強くなったといいます。
このような「〇〇ウニ」の開発では、それぞれの土地の特産農産物を食べさせることでブランド化が容易になるほか、廃棄物の削減にも繋がり一石二鳥の取り組みになっているようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>