東北地方の春を代表する釣りとなったサクラマスジギング。その人気は全国的になりつつあります。この釣りの何がアングラーを魅了してやまないのか?考えてみたいと思います。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター堀籠賢志)
サクラマスへの憧れ
サクラマスは渓流域に生息するヤマメの降海型です。「淡水での釣りはフナに始まりフナに終わる」と言われるよう、ある程度年配のアングラーなら身近なフナ釣りから釣りをスタートした方も多いでしょう。フナから次の魚種へのステップアップは渓流魚となることが多いですが、私も例外ではなく、そうでした。
自転車を漕いで地元の渓流に通い、やっと手にした小さなヤマメのハッとする美しさに魅了され、さらに釣りにハマっていく。やがて、ヤマメの大型がサクラマスだと知り、フィールドをかえサクラマスを追い求めるようになるのは、至極当然と言えば当然の流れでもあります。
陸封型のダム湖でのサクラマスを狙い、スプーンやミノーをキャストし、やっとサクラマスをキャッチした時の喜びは今でも鮮明に頭の中に残っています。希少でその美しさは正に釣り人しか、手に入らない宝石のようなもの。そのサクラマスが本当に鮭のように降海して母川回帰することを知ったなら、何とかしてそのサクラマスをこの手に!と思うのは一連の流れから言えば、最後にたどり着く答えとして当然の回帰ではないでしょうか?
そんな憧れのサクラマスジギングの魅力を、以下に6つ紹介します。
1.美しさと神秘性
パッとみて、その美しさと確固たる意志を感じさせる目付きや面構え。サクラマスには日本人が古くから培ってきた美意識に訴え掛ける美しさがあります。ホロホロと桜の花弁が散るような弱々しい銀鱗の欠片には、水墨画の様なモノトーンの輝きといぶし銀の光が宿っていて、グローブに着いた鱗を洗い流す行為に一種の罪悪感さえ感じてしまいます。
サクラマスは河川で孵化したヤマメの内、十分なエサをとれずに成長に遅れが出た個体が海を目指して降海すると言われています。つまり、河川でのヤマメの劣等生が身体を大きく成長させて、己の子孫を残すための手段として降海を選択する訳です。
太古の昔から、遺伝子に組み込まれた記憶とは言え、淡水から海水へ大きく環境をかえ、さらなる弱肉強食の世界へシフトするのですから、これを神秘的と言わずにはいられません。
2.ミドルレンジ攻略の難しさ
オフショアサクラマスジギングでは主にミドルレンジを狙います。一般的なジギングでは、ジグを投入しボトムまで一気に沈めてからジャークを開始します。青物でも底物でも、このようにジグをボトムタッチしてから釣るのは当たり前と言えば当たり前。サクラマスジギングの難しさはこのジグのボトムタッチを排除することが主因にあります。
青物ジギングならボトムが基準としてあるので、ボトムから何回シャクリでバイトがあったなどと表現します。サクラマスジギングで同様のことをすれば、底物のマダラ、アイナメ、ソイメバル類が釣りの邪魔になるのです。なので、サクラマスジギングでは基本的にジグのボトムタッチはNGとなります。一度、底からジグを追い始めると底物が浮いてしまって中層で掛かってしまったりもします。同船者にも迷惑となりますので、慎むべき行為となります。
ボトムタッチをせずにミドルレンジだけを上げ下げしていると、今、自分の操作するジグが何mを通過しているのかわからなくなることがあります。コレがいわゆるタナボケした状態です。こうなると例えばヒットしても、何mでのヒットだったのかわからなくなり再現性が著しく下がりますし、ほとんど釣れることはありません。キッチリと今現在の自分のジグのレンジを把握しながら操作することはとても大事ですし、釣れる釣れないに関係する1番の勘所となります。
しかし、この難しさこそが攻略したときの嬉しさを倍増させてくれます。
3.ヒットパターンの多様性
これはジギング全般に言えることですが、その日の魚の活性次第では魚のジグへのアタックする状況がかわってきます。サクラマスジギングでは顕著にこの変化を感じ取れることが多いです。
魚の活性がいい場面では、アシストフックもキチンと口に掛かりますが、一旦、魚の活性が落ちると掛かっても身体へのファールフッキングが多くなったりします。ですので、他のアングラーが掛けたサクラマスのハリの掛かり方で魚の活性を予想することも可能です。
一般的には、サクラマスの活性がいい場面では、ジャーク後のジグの一瞬のストップする間を狙ってバイトしてきます。反対に活性が下がってくると徐々にフォール中でのバイトが多くなってきます。そして、スレ掛かりが多くなり、バイトもじゃれつくようなもの多くなります。このことを踏まえて、船中でのキャッチされたサクラマスのハリ掛かり位置を確認して、その後の釣りを構築しアジャストするヒントに繋げていきます。
たくさん釣れる魚ではないだけに、情報量が少ないのがサクラマスジギングの難しさにもなっています。船中のアングラーがその日その時に得られた情報をできるだけ共有して、その日のパターン構築に繋げていくのがサクラマスジギングのキモですので、船中のアングラーの共同作業も大事となってきます。