日本人が大好きな貝の中でもひときわ存在感がある「サザエ」。春が旬であるこの貝の生態について調べてみました。
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つぼ焼きといえばサザエ
サザエと言えば「つぼ焼き」が最初に思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
その起源は、縄文時代までさかのぼると言われており、古くから貴重なたんぱく源として私たち人間に愛されてきた食材です。
そんな古くから愛されえているサザエなのに、実はあまり多くのことを知らないのも事実でしょう。
「サザエ」という名前の由来
まず、サザエの名前についてですが、語源については諸説あり、一つ目はもともとは「ササイ」と呼ばれていた説です。
それがいつの頃からか訛っていき「ササイ」が「サザエ」となったというもの。
そしてこの「ササイ」とは言うのは二つに分けることが出来、「ササ」「イ」とすることが出来ます。
「ササ」は[小さな]と言った意味があり、「イ」は【家】というような意味があります。
この二つの言葉をつなげるとササイは【小さな家】という意味になるのです。
見た目を表現した呼び名が今にまで残っていると言われています。
また、他にもサザエは漢字で書くと「栄螺」で「栄」が「さかえ」と読むことから「サカエ→サザエ」になったという説もあります。
ちなみに「螺」という漢字は『巻貝』に多く使われています。
他の例でいうと『田螺(たにし)』など、渦巻いていることを意味する「螺旋(らせん)」にも同様の漢字が使われています。
サザエの生息域
サザエは北海道の北部、沖縄を除いた日本各地の比較的外洋に面した潮間帯から水深約40mまでの岩礁に生息しています。
サザエには貝殻の表面に棘のあるものと無いものがいることが知られています。
この違いの原因については様々な説がありますが、一般的にはオスメスの性別のよるものではなく、棲んでいるところの違いによって起こるといわれています。
波が強く、流れが速いような荒磯で育ったサザエには立派な棘が発達し、一種のスパイクのように岩にトゲが引っかかり、流されにくくするために発達したのではないかと言われています。
反対に波の穏やかな場所で育ったサザエは流される心配がないためか、棘は発達せず、全く無いものも多くいます。
サザエの旬は春
サザエは春先、水温が上がると活発に動き出し、夏の産卵へ向けて海藻をもりもり食べて身が太り美味しくなります。
関東地方では桃の節句(ひな祭り)に、巻き貝には願い事が叶うといういわれがある事から、サザエを縁起の良い料理として用意する習慣があるそうです。
危険が迫ると殻の中へ
巻貝は休息のときや危険に遭遇したときに、やわらかい体(頭部や足部)を螺旋状に巻いた殻の中に退縮させ、殻の口を足の後部背面にある蓋で閉ざすことが出来るものが多いです。
しかし、殻や蓋の大きさ、厚さなどの発達程度は種類によってまちまちで、体がはいることのできないような小さな殻しか持たないものや、ウミウシのようにまったく殻を持っていないものもいます。
サザエの殻や蓋は皆さんご存じのとおり、よく発達しており、厚くずっしりと重く、とても頑丈で簡単には壊すことが出来ません。
天敵は別名『サザエ割り』
大人になったサザエの殻は、ほとんどの生き物が壊すことが出来ません。
しかし、ほとんど無敵と思われているサザエですが、海の中にはこの殻を割るような天敵もいます。
身近なところだとクロダイやイシダイ、タコなどですが、ネコザメが一番の天敵で別名に『サザエ割り』とつくほどサザエが好物となっています。
ただ、どれだけ殻や蓋を分厚くしたとしても、人間の前ではほとんど無力というのが現実です。
そのため、彼らにとっての一番の天敵は私たち人間なのかもしれません。
トゲの有無によって味に変化は?
棘が立派なサザエは、棘の無いサザエと比べ見栄えもよく、高価な値段で取引されます。
しかし、これらのサザエの間に味の違いがあるのかはわかっておりません。
そろそろサザエが美味しくなる季節ですので、どちらの方が美味しいかは、皆さんが実際に試してみてはいかがでしょうか?
<近藤 俊/サカナ研究所>