魚類最大のジンベイザメや、世界最大の動物であるシロナガスクジラは、その巨体に似合わない「プランクトン食性」です。なぜ、これだけ大きくなることができるのでしょう。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「新種の太古ザメ」が発見
2012年にメキシコ北東部で見つかったとあるサメの化石が、その後の研究により「新種」だったことが判明し、話題になっています。もちろん新種と言っても現在生き残っている種というわけではなく、新しく見つかった化石種ということです。
「イーグルシャーク」の異名を持つこのサメは、まるでグライダーの翼のようなとても長い胸びれが特徴です。このひれで水を掻いて速く泳ぐことはできず、魚のような素早い生き物を捕食するには全く適していなかったと見られています。
また同時にその骨格から歯やそれに類するものは一切見つかっておらず、歯が非常に小さいか完全に失われていたことも想像されます。これらの条件から、このイーグルシャークはプランクトンを食べていたと考えられています。(『翼のような胸びれ持つ「イーグルシャーク」 太古の新種ザメ発見』AFP BBNews 2021.3.19)
プランクトンを食べる大型動物
イーグルシャークは全長約1.65m、長い胸びれの先端から先端までの長さは1.9mほどあったことが化石からわかっています。現代の基準に照らし合わせても、決して小さなサメとは言えません。
また、このイーグルシャークと競合し、やがて取って代わったと考えられているイトマキエイの仲間は、最大種のマンタであれば最大で8mを超えます。またサメの最大種であるジンベイザメは10mを超え、現生種の魚の中で最大のサイズとなっています。
彼らはいずれもこれほど大きな体を持ちながら、驚くことに「プランクトン食性」という特徴を持っています。
「プランクトン」食べると大きくなる?
古代のイーグルシャークからから現代のジンベイザメ、さらにシロナガスクジラに代表されるヒゲクジラに至るまで、プランクトンを食べる「濾過食性」の動物には、大型のものが多いことが知られています。どちらかといえばイワシ類のような「生態ピラミッドの低位の生物」の食べるものというイメージも強いプランクトンを食べてなぜこれほど大きくなれるのでしょうか。
生態ピラミッドの最低位であるプランクトンは弱く小さな生き物である一方、生態系を支える土台である彼らの生物的な総量は、上位のいかなる生物よりも多いです。これはつまり「プランクトン食性であれば、より多くの餌にありつける可能性が高くなる」ということでもあります。
また、濾過食という「プランクトン捕食に特化した」形態になることで、少ない労力で多くのプランクトンを捕食することができます。結果として、彼らはその巨体に見合うだけのたくさんのエネルギー源を摂取することができるのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>