ホタテの養殖が盛んな北海道豊浦町で、ホタテの殻を使って作られた合格守りとその「由来」が話題となってます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ホタテ貝のお守り
札幌の南西に位置し、噴火湾に面した北海道・豊浦町。この町で作られたとある「お守り」がいま、ちょっとした話題になっています。
お守りの材料は、当地名産の養殖ホタテの殻。きれいに洗ったホタテの殻に、貝殻の形に切り出した「大漁旗」を貼り付け、合格の文字を書き入れた手作りのお守りです。
これらのお守りは、高校受験を控えていた中学3年生にプレゼントされました。お守りを作成したとようら観光協会は「なんとかみんな自分の思う道に進めたらいいなという思いでつくった」と語ります。(『ホタテの貝殻のお守りが「落ちない」?受験生に評判のワケ』HTVニュース 2021.2.17)
なぜホタテの殻で?
豊浦町で行われているホタテの養殖は「耳吊り方式」という方法が採用されています。これはホタテ貝殻の蝶番の部分(耳と呼ばれる)の殻に穴をあけ、ナイロン製のロープでくくりつけて、ブイからつながるロープで海中にぶら下げるというものです。
この耳吊り方式だと、常に殻が海中にあるのでホタテが砂を噛まず、またあまり貝が動かないため身が柔らかく、上品な味になると言われています。加えて、ホタテの天敵となるヒトデに襲われる可能性が極めて低くなるという大きなメリットがあります。
ロープは嵐の日にも切れないほど強く、養殖中のホタテが海底に落下してしまうようなことは殆どないそうです。そのことから「受験に落ちない」という願かけで、ホタテの殻を使ってお守りを作ることにしたのだそう。
初めから「落ちている」ものも?
このニュースを聞いて「自分でも作りたい」と思う人がいるかもしれません。その際に、ひとつ注意していただきたいことがあります。
実はホタテの養殖には、上記の「耳吊り方式」の他に「地撒き方式」と呼ばれる方法があります。これは「稚貝を放流し、育ってから漁獲する」というもので、栽培漁業に近い手法です。
本来は海底に棲息するホタテにとって、この地撒き方式は耳吊り方式と比べるとより自然の状態に近く、そのため味が濃く、活発に動くために貝柱も大きくなります。ただこの方式では、ホタテははじめから海底に「落ちている」ので、受験合格のお守りには残念ながら不向きと言えるでしょう。
地撒き方式で養殖されたホタテは、蝶番部分の殻に穴が空いていないので、区別は容易です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>