全国の河川や湖沼、池に棲息する小さなエビ「川エビ」。野遊びで捕まえたり、水槽で飼育した経験がある人も多いのではないかと思いますが、実は今の時期は「良い食材」でもあるのです。
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身近な遊び相手「川エビ」
皆様は「エビ」という名前を聞くと、どのようなエビを思い浮かべますか? きっと多くの人は、スーパーマーケットに売られているクルマエビにイセエビ、あるいは安価なバナメイエビなどの「海産エビ」を連想されると思います。
しかし、エビと呼ばれる甲殻類は、池や川、湖のような純淡水域にもたくさん棲息しています。「川エビ」と総称される彼らは、大きくなっても10cm足らずの小型種ですが、実にエビらしい形をしています。
動きもコミカルで存在感があり、子供の頃はこのエビをタモ網で救うのに夢中になったものです。読者の皆様の中にも、ガサガサやペットボトル罠などでこれらの川エビを捕獲したことがある人はきっと少なくないでしょう。
「川エビ」の種類
そんな「川エビ」ですが、日本に棲息しているものだけでも数多くの種類があります。そしてそれらは概ね2つのグループに分けることが可能です。
東日本には「テナガエビ科」に含まれるテナガエビとスジエビ、ならびにその近縁種が棲息しています。西日本にはそれに加えて「ヌマエビ科」のヤマトヌマエビなども棲息しています。これらは互いによく似ていますが、テナガエビ科のエビはハサミ状に発達した脚が目立つのに対し、ヌマエビ科のエビはハサミが短く、よく見ないと見つけられません。
テナガエビ類は体長20cm近くまで成長するものもありますが、その他の川エビの多くはそこまでにはなりません。理科の授業での観察対象やペットとして人気があるほか、水槽に魚と同居させ、機材につく苔などを掃除させる「タンクメイト」としても利用されます。加えて、西日本ではヌマエビ類を用いた釣りが盛んに行われており、クロダイやスズキ、メバルなどがターゲットとなっています。
「川エビ」は高級食材
これらの川エビですが、「エビの一種なんだから食べられないの?」と思う人もいらっしゃるかもしれません。実際のところ、ヌマエビ科のエビは食用にされることはあまりないようですが、テナガエビ科のものは食材として古い歴史を持ちます。
特にテナガエビとスジエビは現在でも、地域によっては一般的な食材。居酒屋で「川エビの唐揚げ」を見つけて注文されたことがある人もいると思いますが、あの多くは海外からの輸入物です。輸入の冷凍品が流通するほど高い需要があるということであり、国産の活けものとなればかなりの高値がつくこともあります。
食材としてのテナガエビは初夏から夏にかけてが旬ですが、スジエビは産卵期を控えた今の時期、2~3月が旬とされています。定番とも言える唐揚げの他、佃煮や干物、大豆と一緒に煮た「えび豆」として利用されます。小さいですが殻が柔らかく、まるごと食べられること、そして旨味が強く良い出汁が出ることから人気となっています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>