中禅寺湖でニジマス持ち帰り解禁 原発事故から「10年」を要したワケ

中禅寺湖でニジマス持ち帰り解禁 原発事故から「10年」を要したワケ

福島第一原発の事故から10年になる今年、栃木県日光市の中禅寺湖で事故以来禁止となっていたニジマスの持ち帰りが解禁されることになりました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

解禁まで10年を要した理由

上記のメカニズムから、汚染された水生昆虫たちの体内におけるセシウム137の濃度は、空間放射線量率とほぼ同じ増加・減少の傾向を示すものと考えられています。そのため、事故から時間が経過する中で放射能の空間線量が下がっていけば、落葉、水生昆虫、そしてマス類の放射性物質濃度も下がっていくのは当然です。

水の交換が早い河川域では、放射性物質で汚染された有機物が留まり続けることは少ないため、生物類の主たる汚染時期は原発事故直後のみとなります。継続的な汚染の影響は小さく、そのため事故直後に放射性物質降下を経験した高齢のマスが捕食される、死亡するなどして数が減れば、それに伴って平均的な放射性物質濃度も低減されていくのです。放射性物質の半減期よりも早く、放射能汚染が解決していくのはこれが理由です。

中禅寺湖でニジマス持ち帰り解禁 原発事故から「10年」を要したワケ釣り上げられたニジマス(提供:PhotoAC)

しかし、中禅寺湖は国内有数の水深を持つ湖。湖水の量も多く、水や沈殿した有機物の交換に時間がかかります。そのため、他の水域よりも影響が長引いたと考えられるのです。

ブラウントラウトは未解禁

また、現時点でもブラウントラウトについては基準値をクリアできておらず、持ち帰り禁止処置が続いています。魚種ごとの放射性物質代謝能力にも差があるものと見られており、全面的解禁にはまだ多少時間がかかるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>