臭い魚の代名詞「ボラ」がイメージ回復中 高い適応能力で養殖事業化も

臭い魚の代名詞「ボラ」がイメージ回復中 高い適応能力で養殖事業化も

海面をはねるサカナ「ボラ」。どこにでもいるサカナではあるものの、実はよく知らない人も多いのはず。今回は、必要以上に嫌われているボラについて調べてみました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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サカナ研究所 その他

へそも珍味

ボラには卵巣以外にも珍味になる部分があります。それは『ボラのへそ』。

正式には『幽門』という名の部位のことで、口から吸いこんだ砂泥から食料となる有機物を選別し、吸収した後の砂や泥を排出する機能を有している部位です。その形状から別名『そろばん珠』とも呼ばれており、人間でいう十二指腸に当たる部位だそうです。

このボラのへそ、実は非常に美味で、言うなれば「鶏の砂肝」のような歯応えのある知る人ぞ知る珍味なのです。一匹からごくわずかしか取れないため、なかなかお目にかかることはできませんが、釣った人のみが食べられる特権と言ってもいい部位でしょう。

嫌われるようになった理由

身も美味しく、卵巣やへそが珍味で重宝されそうなボラですが、今ではほとんど食用とされていません。古くは高級魚としても扱われ、江戸時代などは贈答用などにも使われ、一時は千葉県内房浦安沖などでは養殖も行われているほど重宝されていたボラ。

それがなぜこんなにも嫌われる存在になってしまったのでしょうか。それには私たちの文化の発展が大きく関わっています。

高度経済成長の頃、当時は今のように排水などは管理されていなかったため、多くの川が汚染されていました。しかし、ボラは強靭な生命力、そして適応能力を持っていたため、その頃の水質汚染にも耐えることが出来てしまった為、汚染された水によって臭みのあるボラが多くなってしまったのです。

この頃からボラを食する文化は徐々に薄れていき、「臭くて食べれないサカナ」というイメージが残ってしまったのです。

少しずつイメージ回復中?

関東地方ではまだまだ食用のイメージは薄いかもしれませんが、関西では近年少しずつ流通量が増えているようです。また、海外においてはフィリピンなどでも強い生命力、環境への適応能力から養殖の研究が進められているそうです。

日本近海の水質環境がもっと向上すれば、もしかしたら近い将来には昔のように多くの人から愛されるサカナになっているかもしれません。

美味しい魚であり、よく釣れる魚であり、冷蔵庫を使わなくても淡水で生かしておくことが出来る【ボラ】。今後の活躍に期待です。

<近藤 俊/サカナ研究所>