新潟県の海岸に大量のイワシが打ち上げられ、話題になりました。「天変地異の前触れでは」という声もあったそうですが、実は過去に何度も発生している現象でもあるんです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
イワシが大量に打ち上げられる
新潟県柏崎市荒崎の海岸で、今月初頭に突然、大量のイワシが打ち上げられるという出来事がありました。打ち上げられたのは煮干しの材料としても有名な「カタクチイワシ」で、1km以上もの長さに渡り打ち上げられたということです。
打ち上げられる直前には、波打ち際で大量のイワシが群れをなす様子も観察されています。地元の人は「何年も釣りしているけど見た覚えはない。どんどん、どんどん上がってくる」、「カタクチイワシが浜に打ち上げられることはこれまでもあったが、これほどの数は初めて」と話しているそうです。
専門家は「詳しい原因については不明」としており、近隣では海の異変として気味悪がる声も少なくないそうです。(『海に異変? 大量のイワシが海岸に 専門家2つの可能性指摘』BSN新潟放送 2020.10.7)
実はよくある話?
しかし実のところ、このような「イワシの大量漂着」は決して珍しいことではなく、これまでも全国各地で度々発生しています。
例えば今年の4月には富山湾の沿岸に大量のマイワシが打ち上げられました。漁業者によって廃棄されても次々と打ち上げられ、一説によればその量は10tにも及んだといいます。(『何故かイワシが爆湧きしていたので拾ってきた / 新潟県 マイワシ』食う・寝る・探す 2020.4.3)また夏には函館港に大量のイワシが迷い込み、酸欠になってしまい大量死したという出来事がニュースになりました。
静岡などほぼ毎年のようにどこかでイワシの打ち上げが発生している地域もあり、外洋に面していたり、潮通しの良い地域ではある意味「風物詩のひとつ」とも言えるような現象となっています。
イワシが打ち上げられる理由
イワシ類は大きな群れを作り、広い範囲を回遊しています。ただ彼らのエサは沿岸部の浅い場所に多く存在しており、朝晩を中心に沿岸の浅い場所を回遊することがあります。
このようなときは、そのイワシを捕食しようとするフィッシュイーターも岸近くに寄ってくるため、彼らに追い回されたイワシがパニックになり、勢い余って打ち上げられることは多いようです。
釣りをしていても、イワシの群れが大型魚や鳥に追い回されて、漁港内を泳ぎ回り、打ち上げられてしまうシーンはしばしば見かけます。
またイワシ自身がエサを追っているうちに浅瀬に入り込み、たまに来る大波にまかれて打ち上げられてしまう例もあるようです。
このようなイワシは打ち上げられた直後は生きており、新鮮で美味しそうに見えます。しかし漂着の原因がわからないものや、死んでしまったものは念の為、食用にはしないほうが無難でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>