9月1日、日本海側で底引き網漁が解禁。初日から様々な魚介が水揚げされましたが、中でもちょっとマイナーだけど美味しい「ニギス」の豊漁に注目が集まっています。
(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)
日本海の底引き網漁が解禁
9月1日、日本海の底引き網漁が解禁されました。山陰から北陸までの各県では、初競りが行われる2日の朝に合わせ、1日深夜から底引き網漁の漁船が次々と出船し、漁場へと向かいました。(『底引き初物水揚げ 石川県内』北國新聞 2020.9.3)
日本海側の各地で行われる底引き網漁は「かけ回し」という漁法で行われるものが主体です。これはまず起点となる場所にブイを下ろし、それを支点にロープ・網・ロープの順で海中に下ろしていき、ブイのところに戻ってロープの始点と終点を漁船に結び、引っ張る、という方法で行われます。
1艘の漁船で大きな網を引けるのが特徴で、水深300mほどの深さまで網を入れることができます。
日本海で行われている底引き網漁は京都府では5月まで、石川県では6月まで行われます。期間こそ長いものの、特に冬から春にかけてシケることが多い日本海では意外と漁ができる日は多くなく、年間で100日程度だと言います。(『底びき網』JFいしかわHP)
水揚げは上々
初日の漁では、沖合底引き網漁の代表的魚種であるノドグロやササガレイ、甘海老(ホッコクアカエビ)などが次々と水揚げされました。今年は気温や水温が記録的に高く、漁に影響が出る可能性も指摘されていましたが、初日の水揚げは各県とも悪くなかったそうです。
新型コロナウイルスによる買い控えで魚価の低下も懸念されていますが、とりあえずは順調な滑り出しを見せたと言えるでしょう。
市場ではズワイガニ・甘えび・アカガレイなどが人気が高く、単価も高いために好まれます。
その一方で、混獲されるものが多いのが底引き網漁の特徴で、ニギス・ハタハタ・ホタルイカ・マダラ・アンコウ・バイ・ミズダコなども漁獲され、競りにかけられます。
2020年は「ニギス」が豊漁
さて、沖合底引き網漁が盛んな京都府舞鶴の漁協では、解禁日にとある魚が予想外の豊漁となりました。それは「ニギス」。(『ニギス大漁、掛け声威勢良く 底引き網漁解禁 京都・舞鶴で初競り』毎日新聞 2020.9.2)
中深海での漁獲が多い
ニギスは名前の通り「キス(鱚)に似ている」魚ですが、その性質は大きく異なります。浅い海域に多いキス類と異なり、ニギスは200m前後の「中深海」に多く、水深100mから300m程度を曳く沖合底引き網漁ではよく漁獲されます。
実は美味しい魚
このニギス、知名度的にはいまいちですが、実は知る人ぞ知る美味しい魚。一年を通してそれほど味が落ちない魚ですが、5月頃と9月頃にはエサをよく食べて味が良くなるため、各地で水揚げされています。
日本海で水揚げされるニギスはとくに脂のノリが良いことで知られており、干物、煮付けなどで珍重されています。今年の初競りでの最高額は10kg2600円となったそうで、小売店でも手頃な価格で販売されることが予想されています。(『ノドグロ、ササガレイ…「秋の日本海の味覚」水揚げ 底引き網漁解禁』京都新聞 2020.9.2)
<脇本 哲朗/サカナ研究所>