函館でイワシが『大量死』 サンマの不漁とも関係があった?

函館でイワシが『大量死』 サンマの不漁とも関係があった?

函館の港でイワシの大量死が確認されました。この大量のイワシが、あの「国民魚」であるサンマ不漁の一因となっているという説があります。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

函館港でイワシの大量死

9月1日、北海道を代表する港湾である函館港内に、イワシの死骸が大量に浮いているのが確認されました。その量は実に5t以上で、港内の水面を覆い尽くすほど。

暑さが続いていたこともあり、すぐに腐敗が始まって悪臭を発し始めたため、除去作業が行われましたが、全てを片付けるには数日かかったといいます。(『函館港でイワシが大量死 撤去作業続く 背景には水温の高さが… 北海道』北海道放送 2020.9.2)

なぜこのようなことが起こったのでしょうか。

イワシ大量死の理由

調べたところ、港内や近隣海域で赤潮が発生したり、有毒物質が流入したというような事例は確認されませんでした。そのため、もっと一般的な「自然現象」によりこの大量死が発生したと推測されます。

酸欠の可能性

この夏、北海道周辺の海域はどこも水温が非常に高い状態が続いていました。水温が高くなるほど水中に溶け込むことができる酸素の量は減少するため、海中は慢性的な酸欠状態になっていたものと考えられます。

函館でイワシが『大量死』 サンマの不漁とも関係があった?イワシは酸素を大量に必要とする魚(提供:PhotoAC)

また、同時に今年はイワシの回遊量が多くなっており、それを追いかけてブリなどの大型魚も盛んに接岸している状態が続いていたといいます。そのような大型魚に追いかけられたイワシの群れが函館港内に迷い込み、出られなくなる中で酸欠に陥ってしまい、そのまま大量斃死してしまったのではないか、と専門家は推測しています。(『函館港でイワシが大量死 撤去作業続く 背景には水温の高さが… 北海道』北海道放送 2020.9.2)

サンマ不漁との関連性

さてこのように、今年は北海道周辺の海域にイワシが大量に回遊しているのですが、実はこれが「日本の秋の味覚」であるサンマの不漁につながっている可能性があると指摘されています。

イワシとサンマは同様の食性があり、生態的にも似通っている部分がたくさんあります。それもあって同じような水温の水域を好む傾向があります。その一方で、イワシの群れがいる場所をサンマが嫌うことが、漁師や研究者の間では知られているそうです。

函館でイワシが『大量死』 サンマの不漁とも関係があった?サンマとイワシは仲が悪い?(提供:PhotoAC)

現在、北海道沖の本来サンマがいる水温帯にイワシがいるため、サンマがより沖合の低水温帯にいるものと見られており、結果としてこのことが不漁要因になっているのではと考えられているそうです。(『サンマ記録的不漁&イワシ大量死は密接に関係か…「まるでお湯」異常に高い”海水温”が異変の背景に』北海道ニュースUHB 2020.9.2)

様々な要素が重なった結果起こっている北海道の海の異変。今後、台風の通過などで海水がかき混ぜられ、高水温状態は落ち着くものと見られていますが、引き続き注意して観察していく必要がありそうです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>