実は頻発しているマグロ類の漂着事故 小魚追って「ついつい」が理由?

実は頻発しているマグロ類の漂着事故 小魚追って「ついつい」が理由?

青森で、海水浴場に巨大なマグロが打ち上げられ、話題となっています。沖合を高速で回遊しているイメージの強いマグロ類ですが、実はしばしば浅瀬に寄り、目撃・捕獲されているようです。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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青森県八戸の海水浴場に巨大マグロが漂着

8月22日、青森県八戸の「白浜海水浴場」で地元大学生が撮影し、SNS上で公開した動画が話題になりました。写っていたのはなんと1mほどはありそうな大きなマグロ。膝程度の水深しかない場所に打ち寄せられているようです。

このマグロはキハダマグロと見られ、弱ってはいましたがときおりヒレをバタバタと動かしていました。撮影後しばらくして、沖に向かって泳ぎだしたとのことです。

実は頻発しているマグロ類の漂着事故 小魚追って「ついつい」が理由?食用として重要なキハダマグロ(提供:PhotoAC)

現地でも「大変珍しいこと」と注目されていますが、理由などははっきりしていないといいます。(『「あっ、マグロ」なぜ海水浴場に出没?地元大学生が動画を撮影 漁業関係者も「理由は分からない」』まいどなニュース 2020.8.25)

実はしばしば発生するマグロの漂着 

現場近くでは以前にも、クロマグロが河川に入り込んだことがあったといいます。遠く沖合を回遊しているイメージが強いマグロですが、実は「漂着事故」は全国的にしばしば発生しています。

たとえば2007年には、沖縄・小浜島で体長2mオーバー、150kgもの大物が浜に漂着し、島民の食材となったということが有りました。(『約150キロのマグロ漂着 小浜で住民大喜び』八重山毎日新聞 2007.7.3)

2013年には和歌山串本町の橋杭海水浴場で、2018年には鹿児島県奄美大島の宇検村で打ち上げられたという報告が残っています。(『マグロ打ち上がる 串本、橋杭海水浴場』紀伊民報 2013.7.21)(『マグロが川に』南波日日新聞 2018.12.15)

実は頻発しているマグロ類の漂着事故 小魚追って「ついつい」が理由?大海原を泳ぎ回るイメージが強いが……(提供:PhotoAC)

漂着までとはいかずとも、「マグロが浅瀬を泳いでいるのを見た」という報告はさらに多いようです。なぜ、沖合にいるはずのマグロが浅瀬に打ち寄せられてしまうのでしょうか。

マグロが漂着する理由

マグロは魚食性が強く、小魚を追いかけて活発に泳ぎ回ります。追われた魚たちは浅瀬や入り江、河口部などに入り込んで逃げようとするのですが、マグロもそれを追いかけた結果、勢い余って浅瀬に突っ込んだり、狭い場所に迷い込んで出られなくなったりすることがあるようです。

マグロやカツオなどの魚は、水中で推進することで口からエラに海水を送り込む「ラムジュート換水法」という方法で呼吸をしているため、浅瀬に入り込んで高速で泳げなくなると呼吸が困難になってしまいます。結果として弱り、体力をなくして打ち上げられてしまうものと考えられます。

実は頻発しているマグロ類の漂着事故 小魚追って「ついつい」が理由?高速遊泳しないと死んでしまう体(提供:PhotoAC)

食中毒の危険も

なお上記の漂着事件の中では、打ち上げられたマグロを食べたという例もあるようです。クロマグロは「黒いダイヤ」とも呼ばれる高級魚で、ただで手に入れば非常に嬉しい話ですが、一方で非常に鮮度が落ちやすく、食中毒の危険もある魚。捕獲して食べる場合、鮮度や状態に気をつけてしっかり確認をしたほうがいいでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>