もっともユニークな魚の一つ、マンボウ。見た目だけでなく、そのユニークな「利用法」についても、注目を浴びています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
世界最大のフグ「マンボウ」
世界最大の魚って何でしょう。
クジラ?
残念。違います。クジラは哺乳類です。
ジンベイザメ?
正解です。サメ類で最大のものであるジンベイザメが、現時点で発見されている世界最大の魚です。そのほか、軟骨魚類であるサメやエイの仲間いは、極めて大きな種がいくつも見つかっています。
では、一般的な魚である「硬骨魚類」の仲間で最大のものはなにかご存知でしょうか。諸説ありますが、重量ベースではマンボウの仲間ではないかと言われています。
マンボウはフグ目の一種で、外洋に適応し、広い海をゆったりと回遊する習性を得たと考えられています。体の割に小さな鰭や、海中をのんびりとたゆたう姿からは想像ができませんが、表層から深海まで潜る力を持ち、クラゲや小魚、イカを捕食していると考えられています。
マンボウの軟骨はスーパーボール?
そんなマンボウですが、先日ちょっと意外なかたちで話題になりました。とあるテレビ番組で「マンボウの軟骨からスーパーボールを作ってみる」という内容の企画が放送されたのです。
大正から昭和にかけて、現在の佐賀県唐津市呼子周辺で、打ち上げられたマンボウの軟骨を子供の玩具として用いたという歴史があったそうです。マンボウは鰭の基部などに大きな軟骨の塊があり、ボール状に丸く削り出すことができます。
番組によると、その軟骨ボールは高いところから落とすとスーパーボールの70%程度の高さまで跳ね上がり、おもちゃとしては十分楽しめるレベルだったとのこと。当地では軟骨の他に、皮を丸めて野球のボールとして用いる文化もあったそうで、意外な形で人々の生活のなかにマンボウの存在があったのですね。
食べるとナタデココ?
さて、このような「道具」としての利用のほかに、「食材」としてもマンボウを利用することがあります。マンボウを食べるというとびっくりされることがありますが、意外と全国的にマンボウを食べる文化が存在し、三重県南部では道の駅の名物にもなっているほどです。
フグの仲間であるマンボウですが、毒はなく、筋肉から内臓、皮に至るまでまるごと食べることができます。全体的に水っぽさが強いのですが、干物にしてじっくり焼いたり、天ぷらにしたりすると美味しく、一風変わった食材として通に知られています。
件のマンボウの軟骨ですが、市販されることは殆どないものの、美味しく食べることができます。さっと茹でると半透明になり、弾力のあるゲル状でまるでナタデココのよう。残念ながら生臭みがあり「見た目を生かしてデザートに……」というわけにはいきませんが、味噌漬けにしてスライスして食べると大変乙なものです。
市場ではマンボウが水揚げされると、筋肉と腸、肝だけを取り出してあとは廃棄してしまうことが多いようです。もし偶然解体作業に出くわしたら、ダメ元で譲ってもらえないかお願いしてみるといいかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>