夢の「アニサキスがいないサバ」は実現されるのか 養殖は大丈夫はウソ

夢の「アニサキスがいないサバ」は実現されるのか 養殖は大丈夫はウソ

しめ鯖や刺身など、生食で美味しい魚でもあるサバ。寄生虫「アニサキス」のリスクが有名ですが、養殖の技術によってそのリスクを限りなく減らすことに成功したブランドサバがあります。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

アバター画像 TSURINEWS編集部

サカナ研究所 その他

生サバ食べたしアニサキスは怖し

日本の食卓を支える魚・サバ。昔と比べると値上がりが著しいものの、それでも大衆魚の代表格としてその存在感を示しています。

日本で一般的なサバはマサバ、ゴマサバそして輸入のタイセイヨウサバの3種。このうち、夏に旬を迎えるものがゴマサバ。夏の海の豊富なプランクトンや小魚を飽食し、脂のたっぷり乗ったゴマサバは東京湾では「トロサバ」と呼ばれ、隠れた人気釣魚となっています。

夢の「アニサキスがいないサバ」は実現されるのか 養殖は大丈夫はウソ脂の乗った東京湾のサバ(提供:野食ハンマープライス)

脂の乗ったゴマサバで作るしめ鯖や鯖寿司は最高の美味で、家庭で作る方も少なくないと思うのですが、しかしそこで問題となるものがあります。ご存知、アニサキスです。アニサキスに寄生されたサバを食べて罹患するアニサキス症は、現在でも年間2000人程度が発症する危険な寄生虫症です。

「養殖ならアニサキスも大丈夫」はウソ

アニサキスは自然環境下に広く存在する寄生虫。そのため「養殖のサバならアニサキスの危険はない」と言われることがあります。しかし残念なことに、これは必ずしも正しいとは言い切れません。

確かに養殖の環境は、野生下と比べるとアニサキスに感染するリスクは低いですが、しかし養殖のサバでも飼料にオキアミやイカナゴなどの生餌を用いることがあると、そこからアニサキスに感染してしまうことがあります。

夢の「アニサキスがいないサバ」は実現されるのか 養殖は大丈夫はウソアニサキス(提供:野食ハンマープライス)

実際に、養殖のサバを生食したことでアニサキス症になってしまった中毒事故も起こっています。(『アニサキスについて知っておこう』横浜市保健所 )どんな方法で養殖されているのか、どんな飼料を使っているかがはっきりしていなければ、養殖であっても過信してはいけません。

アニサキスのいない養殖サバもいる

しかし、これは逆に考えれば「環境と飼料に気をつけて養殖をすれば、アニサキスのリスクを下げることができる」ということ。実際にそれをセールスポイントとしている養殖サバのブランドもいくつかあります。

たとえば鳥取県岩美町の「お嬢サバ」は、地下海水を利用した完全陸上養殖を実現することで、佐賀県唐津市の「Qサバ」は人工孵化させた仔魚を稚魚から親魚に育て、その親魚から卵を採って人工孵化させ養殖する「完全養殖」の技術を用いることで、それぞれアニサキスのリスクを限りなく0に近づけることに成功しています。(『お嬢サバ』山陰いいもの探県記 2019.3)(『完全養殖「唐津Qサバ」』唐津市HP 2020.4)

夢の「アニサキスがいないサバ」は実現されるのか 養殖は大丈夫はウソ養殖サバの活造り(提供:PhotoAC)

これらのサバは同時に、餌を工夫することでサバ特有の生臭みを防ぐことができ、また年間を通して脂のりの良さを実現させています。これまでサバの刺身を敬遠していた人でも美味しく食べられる安全なサバとして、今後知名度や人気が上がっていくと思われます。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>