和食に欠かせない食材である昆布。全国的に用いられるにも関わらず、国内産地は北方に偏在しているため、需要を賄うために養殖も盛んに行われています。天然物と養殖物に差はあるのでしょうか。
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昆布の「天然」と「養殖」
出汁を取るための素材として、あるいは直接口に入るものとして、大変重要な食材である昆布。一口にコンブと呼ばれますが、実はいくつかの種類が用途によって使い分けられています。
わが国で食用とされるコンブには「マコンブ」「リシリコンブ」など6種類が知られていますが、その中でもっとも重要な種であるマコンブは、北海道の各地で養殖が行われています。
マコンブの養殖には、2年かけて天然物と同サイズまで育てる通常の養殖物の他に、1年で出荷する促成物があり、用途によって使い分けられています。利便性が高いこともあって、現在では養殖の生産量が天然のそれを上回っているそうです。(『養殖と天然の違い』京都昆布販売有限会社HP)
養殖昆布の見分け方
天然物のマコンブと養殖物のマコンブは、昆布を見慣れている人なら外見で見分けることができるといいます。
養殖物は、2年ものであれば幅広でしっかりしており、見かけは天然よりむしろ立派なくらいです。その一方で、天然物より質感は柔らかく、適度な厚さがあります。促成物であればこれに加え、色味がやや黒みがかるものが多いようです。(『養殖と天然の違い』京都昆布販売有限会社HP)
ただこれらはいずれも新鮮な状態、あるいは調理をしたあとの状態であり、通常店頭に並べられる「乾燥品」の状態では判別はかなり困難です。初心者は、購入時にお店の人に確認するのが無難でしょう。
養殖品が劣るわけではない
実際に料理に使うと、養殖物は天然物と比べると柔らかく、香りや粘りがやや少ない傾向があると言われています。そのため初心者はつい「天然物のほうが優れているのでは」と思い込みがちですが、実際はそういうわけでもありません。
昆布は様々な用途に用いられる食材であり、それぞれの用途において「求められる特長」は異なります。たとえば出汁をとる場合には風味の強い天然物が向いていますが、一方で昆布煮を作る場合など「柔らかさ」が求められる場面では、硬さのある天然物は不向きなこともあるのです。
また、千枚漬けや昆布締めに用いる場合、昆布の粘りが食材に移ってしまうとよくありません。こういう場合も養殖物が向いているといえます。
値段やイメージに囚われすぎず、必要に応じて選ぶことができるのが大切です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>