前回は〝カカリ釣りの釣り場やエサ、道具の移り変わり〟についてを紹介したが、今回は好みのエサとカカリ釣りの今後について語ってもらった。山本太郎が考えるカカリ釣りの未来とは?
カカリ釣りはもちろん、波止の落とし込み釣り、ウキダンゴ釣り(紀州釣り)、ウキフカセ釣りなど、多彩なクロダイ釣りをオールマイティーにこなす。
シマノ、マルキユー、東レインストラクター。
目次
各地を回っていて土地による違いは?
やはりパターンが存在していますよ。
その土地の釣り方みたいなものがあります。
エサが同じであっても。
僕は清水でもマルキユーのダンゴを使うけれど、地元の人のなかにはまったく使わずオカラだけの人もいる。
どんなダンゴやエサを使っても、やはり釣れ方のパターンがある。
例えば冬、三重では朝から何もいなくて、納竿1時間ぐらい前から急にボラがダンゴをつつきだし、やっと本命がくるかなっという感じ。
でも清水なんかは朝から釣れる。
午前8時か9時ぐらいからアタリがある。
寒期の清水のエサはオキアミ、アミエビ?
オキアミやね、今は。
オキアミがアケミ貝に代わった。
オキアミがどんどん食い込んできてる。
僕がやり始めたころ、オキアミなんて使ったこともないし、オキアミで釣れるという意識もまったくなかった。
今はもうないと話にならないでしょ。
絶対1パックは最低でも持っていくでしょ。
オキアミを使いだしたことで、チヌ自体も入ってき方が変わった。
アケミ貝みたいなこう…、どけどけどけってかき分けて、急にアタリが止まってチヌがわーっと入ってくるということじゃなくて。
なんかこう、エサ取りに交じって「あっ今押さえたな」とか、「アワせたらチヌやった」とかいうアタリ方になっている。
オキアミの存在はすごいと思う。
あらゆるエサ取りが触るんで、チヌに刺激を与えてくれる。
好きなエサは?
僕ほんまはね、アケミの丸貝が好きやったん。
好きやったんやけど、それは過去形であってね。
今はね、サナギ。
それもかけらとかじゃなく丸のままの3つ刺しとか。
太郎さんが一番好きな釣りはやっぱり?
カカリ釣り。
魅力は、アタリが出だしたころに息が止まるという。
「アワせる」「どうアワせてやるか」という…。
あの独特の穂先にね、チヌちゃうかって思えるようなアタリが出たときに息が止まってて、それを一生懸命アワせるタイミングにシフトしていこうとしている自分が楽しい。
実際に息は止まってないんやろうけどね(笑)。
パッと止まってる、みたいな感じやね。
でもね、カカリ釣りの未来は、僕は難しいと思っています。
エサ釣り離れが激しい。
エサ釣りを嫌う時代に突入してしまっている。
それはもしかしたらサイクルかもしれんけど、今の子供らはとにかくエサ釣りを嫌う。
ルアーで狙うチニングとかゲーム性を楽しむ感じでしょうか。
でもカカリ釣りを楽しむ人でも、のんびり楽しむ人と競技思考の人がいますよね?
競技に行く者っていうのは、これはちょっと麻薬的なところがあって抜けられへんねん。
どんな大会でもそうやけど、ほとんど同じメンバーですよ、参加者は。
チヌ釣りをやっていなかったら、太郎さんもルアーに凝っていたかも?
凝り性の飽き性なので、いろんなものをやってきたけど、何をやってたかなぁ。
何かに特化したいタイプだったと思うんで…、どうかなぁ。
とにかく初めてチヌを見たときに、あまりにも衝撃的だったんで。
あの姿形。
初めて見たのは石川県の能登島やったんで、それがこんなに近くにおるなんて思えへんかったけど。
あの、なんか鎧(よろい)を身にまとったような、あのいぶし銀に光るね。
あれを見たとき、あまりにも衝撃的やったんでね。
カカリ釣り自体の人気がおちていると感じる?
これからは厳しくなると思います。
自分で言うのもおかしな話やけどね、僕らみたいな、こうアクの強い者がもう出てけえへんと思う。
次誰が担うかなって。
普通は、なんかくすぶってるのとか、磨いたら光りそうなんがおるはずなんやけど、おらへんもん。
市場が激減してるんでね。
それはもう、怖いというかね、先細りしていくのかなぁと。
チヌの数も減っている?
逆にチヌの数は増えていると思います。
まず温暖化。
多分ですよ、僕らが始めたころより2度ほど。
それもね、夏じゃなくて冬に高い。
2~3度ぐらいね。
チヌに対する適水温が長い。
釣れる期間が長い。
僕らが始めたころは、ほんまにこんなにずーっと釣れるってことなかった。
春の乗っ込み期にパラパラッと釣れたけど、そんなんホンマに宝くじ当てるようなもので。
それで産卵入ったら止まって夏ごろまで釣れへん。
9月10月はすごい釣れるんやけども、11月になるとだんだん型が小さくなってきて、11月の後半、季節風が吹きだすとどこも釣れなくなって終わってたからね。
僕は今、フィッシング遊さんで一日アドバイザーとかやるようになったけれど、お客さんの話は
「やってみたいけれど、やり方が分からない」
「敷居が高い」
「やり始めたが壁にぶつかって、どうやってそれを乗り越えたらいいか分からない」
そんなのがほとんど。
釣り人を育てなければいけない。
そんな山本さんの意見もあって、シマノのホームページで展開してきた黒鯛流儀のファンの集いをやることに?
ファンの集いとうたっているけど、教えに回るからね。
2月に神奈川の長井でやったけどね、ほぼいっぱいやった。
カカリ釣り市場は頭打ちでこれ以上伸びようがない、どうにかしないといかん言うたら、新規開拓。
釣り人を増やしていくしかないもん。
教えていくしかない?
そうそう。
それをね、メーカーとわれわれが一緒になって、今までよりもさらに一歩進んだ画期的な集め方、教え方でね。
システム化して、もっとカカリ釣りの入り口を広くしてやる。
敷居をなくしてやる。
例えば、エサのマルキユーさんでもサオやリールをそろえて貸してあげたり。
それくらいしないとね。
特にカカリ釣り、ウキダンゴ釣りとかもそうやけど、ダンゴなんて、これとこれを混ぜて水分はこれくらいって言っても分かるわけがない。
聞いただけで尻込みしてしまう。
軽量カップがあっても、混ぜ具合、力の入れ具合、握り方のコツとかね。
そんなん考えたら…。
メーカーさんが音頭取るしかないねん。
僕個人がなんぼやったってタカが知れてるんでね。
一日アドバイザーを始めたフィッシング遊さんでも教室を行うとか?
今年から教室をやります。
年2回。
継続ですよ、継続。
継続は力なり。
1回2回やって終わりじゃなしに、ずっとやり続ける。
はりきってますよ!
最後にカカリ釣りを始める人にひと言?と問いかけると、
山本さんからはカカリ釣りの未来を憂う言葉が飛びだした。
このままではカカリ釣りはどうなるのか?未来はあるのかと。
けれどそこでとどまらず、未来へ向けて動き始めていた。
釣り人がいないのならば、増やせばいい。
メーカーを動かし、釣具店を動かし、そして今度は釣り人を動かす。
その原動力は、初めてクロダイを見たときに受けたという衝撃だろうか。
1本のイトの先にいるクロダイ、穂先に出るアタリでそれを感じ、想像し、予想
してハリに掛ける、その瞬間を楽しむ。
釣りは多種多様。
魚の種類も釣り方も、場所も、楽しみ方も多種多様だ。
山本さんが40年間変わらずに住むカカリ釣りの世界、今回のインタビューで少しは伝わっただろうか。
願わくば、カカリ釣りの、いや釣りの世界の住人が少しでも増えるとうれしい。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
カカリ釣りはもちろん、波止の落とし込み釣り、ウキダンゴ釣り(紀州釣り)、ウキフカセ釣りなど、多彩なクロダイ釣りをオールマイティーにこなす。
シマノ、マルキユー、東レインストラクター。
この記事は『週刊つりニュース中部版』2018年4月20日号に掲載された記事を再編集したものになります。