釣った海水魚を自宅で飼ってみたい・・・。そんな思いを抱いた釣り人は多いのではないだろうか。今回からは魚飼育の専門家である、大阪・吹田市の生きているミュージアム・ニフレルの展示計画チームの面々に釣魚の内、飼育にオススメの魚を伺ってみた。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)
成魚の最大サイズを考慮
今回、お話しを聞かせていただいたのはニフレル事業部(株式会社海遊館)・展示計画チームの百田和幸さんと澤竣介さん。
お二人によるとまず、釣ってきた不特定の魚を飼育する事を考えた時、重要な点があると言う。それは魚のサイズ。魚は成長した際、それぞれに最大のサイズが異なるのはご存じの通り。
たとえば、ブリのように成魚で1mを超すような魚種もあれば、チヌ(クロダイ)のように50~60cm、メバルやキュウセンのように30cmを超す程度、さらに小さなアミメハギのような数cmで成長が止まる魚もいる。
あまりに大きくなる魚を小さな水槽で飼育するのには無理があるので、まずは準備できる水槽の大きさを考慮して魚種を選ぶ事が重要である。
回遊魚は難しい
魚の中には、マグロに代表される、大海を泳ぎ回る回遊魚や、チヌ、カワハギ、あるいは根魚などのように、高速で泳ぎ続ける事があまりない魚もいる。海の中とは違い、動き回れるスペースが制限される水槽の中では、一定のスペース内に定位するような魚種が飼いやすい。
あまりに泳ぎ続ける青物のような魚はオススメできず、それでも飼育するなら、水量も多く必要で、常に水流を作ったりする必要がある。
飼育開始に適した時期
ずばり言うと、海水魚を飼育する時期はいつでもOKとのこと。
ただ、波止釣りをしている人なら分かるかもしれないが、冬場よりも水温が高い夏~秋の波止回りは小魚も多いので、水槽で飼育しやすい魚がいろいろと手に入る利点がある。
飼育にオススメの面白い魚
では、専門家から見てオススメの魚はどんな種類だろう。オススメ魚種として5種類を挙げていただいた。
1、カワハギなど
カワハギやアミメハギなどは回遊魚とは正反対の泳ぎ方で、いわゆるホバリングしてエサを取る事からも分かるように、泳ぎ方が大人しいので少々狭い水槽などでも飼育しやすい魚だ。カワハギなどは餌付けをしやすく、飼育下でもエサに困らないのがありがたい。
ただ、気性には個体差があり、ナワバリ意識の強い個体を入れると、狭い水槽内でケンカが起こり、優劣が付いてしまうと一方的に弱い魚がエサも食べなくなるような状況になってしまう。そんな事が起こらないように、障害物や偽の海草などを入れて住みかを分ける事も必要だ。
2、スズメダイ
サビキ釣りでアジなどを狙っていると、よく釣れるオセンの正式名称がスズメダイだ。南方系の仲間であるコバルトスズメやデバスズメ、ルリスズメは、そのきれいなブルーが特徴的で人気があるが、波止回りのスズメダイは茶色がかったグレーに白い点が特徴だ。
スズメダイを飼育しやすい理由は、何でも食べてくれる事でエサに困らない点だろう。
そして、波止回りでも見られるように群れで飼育するのが面白い。ただし、スズメダイも繁殖期には気性が荒い部分も出てきてナワバリ争いをする時期もある。それを避けるなら、小型のスズメダイを集めたい。
3、キジハタなどのハタ類
波止回りで狙えるハタ類の代表と言えばキジハタ。関西ではアコウと呼ばれ、最大サイズで50cmを超すが、波止回りではガシラ(カサゴ)程度の大きさ、つまり10~15cmの姿が見られ、ワームなどで狙える。
キジハタは基本的に肉食魚だが、比較的餌付けがしやすいので、飼育もしやすい。そこがオススメな点だ。
また、ハタ類は飼育していると魚体の色がかわるタイプが多いのも面白い。ホンソメワケベラなどと一緒に入れるとハタ類の掃除をする動きも見られて楽しい。
4、ネズッポ
いわゆるガッチョ、テンコチ、メゴチと言ったキス釣りのゲストで登場する魚だ。見た目は地味だが、背びれがきれいで、争いをする時に背びれを立てる。
面白いのは鏡を入れて自分の姿を映してあげたり、スマホで自撮りにしてガラス面を魚に向けて動画を撮ると、その行動が面白い。
5、マダコ
マダコは何と言ってもその行動が非常に面白い。見ていると飽きが来ないのと、その「探求心」の強さに驚かされる。
ただし、水槽内の水が汚れたり、居心地が悪くなると脱走する。目の大きさの隙間さえあれば脱走できるので、いかに居心地よく過ごして貰うかがカギだ。