古くから大阪北港を始め、大阪湾奥の波止で春の釣りを彩ってきたのが、シラサエビをエサにしたエビまき釣り。メインの対象魚はハネ(フッコ)、スズキで、チヌやキビレも交じってくる。春の本番を迎えたエビまき釣りのタックルとエサ付けを、大阪北港の名手・新宅功治さんに聞いた。
大阪北港の名手
大阪市大正区在住の新宅さんは、古くからお膝元である大阪・北港の波止に年間を通じて通い詰め、エビまき釣りを中心にフカセ釣りや、タチウオ、根魚、ノマセ釣りなど大阪北港のあらゆる釣りに精通する。
そんな新宅さんが、今年も本番を間近に控えた4月下旬に大阪北港へエビまき釣りに釣行するとのことで同行させていただいた。
北港マリーナへ
この日、たまや渡船で渡してもらったのは、淀川河口左岸に位置する大阪北港マリーナ(旧大阪北港ヨットハーバー)のすぐ沖に浮かぶ一文字で通称・北港マリーナ。
ここは春のエビまき釣りでは超実績場で新宅さん自身も90cm以上のスズキを何尾も仕留めている場所だ。また、スズキ、ハネ以外にも、チヌは60cmオーバーが何尾も目撃されていて、70cm超を見たという人もいる大物場。
当日の状況
4月13日は絶好の好天に恵まれての渡堤となったが、一つ気になることがあるという。
「去年の台風で淀川から土砂が流れ込み、マリーナの内向きがかなり浅くなっている。そうなってから初の春シーズン到来なので状況がどうなっているのかが気になる」とは新宅さん。ただ、常連さんでここによく渡る人は数日前にもキビレを入れ食いさせたとか…。
さて、まず釣り座に選んだのは赤灯台(淀川河口に近い)先端より少し戻った場所。ゆっくりとした潮が赤灯台付近の先端部をかすめ斜め沖へ払い出し、ちょうど新宅さんが設定した釣り座はその流れに引かれていく潮。
エビまき釣りタックル
さて、ここで新宅流のタックルセッティングを紹介していこう。基本的な仕掛けは図のようなイメージで、特徴的なのはやや太めのミチイトに段打ちのシズ、そして自立式に改造した棒ウキ。新宅さんに伺うと、それぞれに長年のキャリアから会得した理由があった。
まずはミチイトの太さ。チヌのフカセ釣りでもそうだが、波止からのチヌやハネ釣りなら通常は2号までを使う人が多い。それは新宅さんも同じだが、マリーナはとにかくいきなりデカいスズキがヒットする。
ハネクラスなら楽々上がる、オーバーパワーなタックルかもしれないが、いきなり襲ってくるランカークラスのスズキを取るためにミチイトは3号を使う。
そのやり取りで活躍してくれるのがリアドラグ式のスピニングリール。大型のスズキはいったん走り出すと、簡単にイトを出してしまうと止まらない。
特にレバーブレーキ式で引かれた分だけイトを出そうとすると止まらずにはるか彼方へ走っていってしまうことも多い。
ここぞというときに止めるために、ややしっかりとした強めのドラグで溜めることも必要なのだ。その辺りの微妙な調整がしやすいとのこと。
ウミタナゴバリがおすすめ
ハリは細軸のチヌバリ、もしくはウミタナゴバリ。以前はウミタナゴバリを好んで使っていた。というのも、スズキがハリを飲み込んだときに、ウミタナゴバリは口の中に掛からず、口元まで出てから口元に掛かるハリ先が短い形状のためだ。
ハリを飲まれた状態で口の奥に掛かると、どうしてもざらざらの歯でハリスが痛み、ラインブレイクの原因になってしまうからだ。
現在、ウミタナゴバリと平行して愛用している細軸のチヌバリは、新宅さんのハネ釣り用にあるメーカーが特注で制作してくれたもので市販品ではないらしい。
棒ウキに工夫
新宅さんが使用する棒ウキには全て脚にオモリを巻いて、ウキの浮力を一律で0.5号に調整してある。こうすることで、持参するウキの浮力調整用オモリ(クッションゴム付きオモリ)は0.5号のみでOKとなる。
「オモリをいろいろ持ち込まないでいいのもあるけど、特に大型のスズキに対して、仕掛けは軽い方がいい」と話す。なので、ウキに表示されている号数は1.5号であったり、1号であったりするが、脚に巻くオモリで調整済みなのだ。
段シズが特徴的
仕掛けの最後は段打ちシズについて。新宅さんはハリス1ヒロの中にジンタンオモリを2個打ちする。打ち方は上にG4、下にG2となり、下に打つオモリの方が大きいのが特徴だ。
これは後で出てくるのだが、食い渋り対策に有効な手段となる。簡単に言うと、上から順に重たいオモリを打っていると、上のオモリが重いことによりV字型に沈む。さしエサに近い部分をできるだけ先行させて仕掛けの馴染みを早くし、ハリスを張ることで小さなアタリを確実にとらえるのが目的だ。
ほか、エビまき釣りに欠かせないアイテムは、エビブク、エビをすくうネット、エビをまくための専用シャク。