和食に欠かせない出汁食材・昆布。その少なからぬ量が「対立国の許可のもと」漁獲されています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
貝殻島の昆布漁業交渉が妥結
我が国の食卓を支え、世界に羽ばたく「和食文化」の礎ともなっている最重要食材・昆布。近年の海洋温暖化により漁獲を大きく減らしており、その確保が重要な問題となっています。
そんな昆布漁について先日、非常に重要な取り決めが締結されました。それは「貝殻島」のコンブ漁業に関するものです。
昆布(提供:PhotoAC)貝殻島の周辺はコンブが豊富に生育する海域で、コンブ漁において重要な場所です。そこでの漁業に関する取り決めが締結され関係者が胸をなでおろしたのですが、この取り決めはなんと「日本とロシア」の間で締結されるものなのです。
漁場は「北方領土内」
いったいなぜコンブを採るのにロシアの許しが必要なのか、それは貝殻島がとてもデリケートな位置に存在しているためです。
貝殻島は住所でいうと北海道根室市に所属し、日本固有の領土である一方、太平洋戦争末期にソビエト連邦によって不法に占拠され、現在もロシアの不法占拠が続いているいわゆる「北方領土」の島なのです。
貝殻島(提供:PhotoAC)北方領土というと多くの人が択捉・国後・色丹・歯舞の4島を想像されると思いますが、実際は根室半島と国後・歯舞島の間に広がるいくつかの無人島・岩礁帯もロシアに不法占拠されており、北方領土に含まれます。貝殻島は中でも最も日本本土に近い場所で、本土最東端の納沙布岬からまさに目の前に見えます。
日本の領土であり領海内なのだからロシアに断りなんかいらないだろう、と思う人もいるかもしれませんが、日本の漁船がこの貝殻島と日本本土の中間線より少しでもロシア側に入るとあっという間にロシアの国境警備隊がやってきて拿捕されてしまい、ロシア側に連れ去られてしまうため、漁業協定は現状やむを得ないものといえます。
食卓に上がる北方領土の魚介たち
ロシアに金を払ってまで漁獲したものなんか食べたくない! という憂国の士も少なくないかと思いますが、実はコンブ以外にも現在多くの水産物が北方領土で水揚げされています。
中でもスーパーなどの店頭で目に付くものはウニです。このウニはロシア産として売られることもありますが、北方領土産として売られることもあります。ロシア産とするとロシア側に「日本人も北方領土をロシアと認めている」と難癖をつけられかねないので、北方領土としっかり表示するほうがよいのではないかと筆者個人としては思います。
ウニ(提供:PhotoAC)またそれ以外にもタコ類、スケソウダラ、ホッケなども漁業協定が結ばれ、日本の漁船による漁業がおこなわれてきましたが、ここ数年は出られないことも多くなっています。これはロシアによるウクライナ侵攻に抗議して行われた西側諸国の制裁にわが国が参加していることにロシアが反発し、日本側の漁業交渉要請を無視しているためです。
ロシアによるわが国への無法行為は、地元北海道の人だけでなく、全国民へ影響を及ぼしているのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>


