冷え切った朝気が頬を刺し、吐き出す息が白く宙に滲む。冬の気配がはっきりと輪郭を持ち始めた12月12日、シーズンの終章を迎えたハゼを追い、木曽川河口へ向かった。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・HAZEKING)
脈釣りで大型ハゼを狙う
水温が下がるにつれ、多くのハゼは沖の深場へ移動し、産卵を控えた静かな時間に入る。しかしすべてが去るわけではない。川沿いに並ぶ波消ブロックの隙間には、わずかながら居残る個体がいる。
数は限られるが、潜むのは経験を重ねた良型ばかりだ。根掛かりが常につきまとう緊張感の中、精密な操作と集中力が要求される。その分、1尾に辿り着いた時の満足感は格別だ。今回は脈釣り一本で勝負することにした。
当日の釣り場(提供:TSURINEWSライター・HAZEKING)ボトムでアタリ到来
潮回りは小潮。北西から吹き付ける風は6mに達し、断続的に飛沫が舞う。底は荒れ、ハゼは巣穴のさらに奥へ身を隠している様子がうかがえる。そこでエサはアオイソメを通し刺しにし、存在感を強めた。
アオイソメ一本刺し(提供:TSURINEWSライター・HAZEKING)狙いはボトム。ラインテンションを保ち、余計な動きを加えず待つ。すると水深1mほどの穴で、竿先に微かな震えが伝わった。ついばむような反応だ。
17cmマハぜを手中
軽く穂先を持ち上げると、曖昧だった感触が確かな重さに変わる。ここで急がない。30秒ほど間を取り、完全に口の中へ収まるのを待つ。やがて重心がはっきりと下に乗った瞬間、鋭く合わせる。
ロッドがしなり、手元に鈍い重量が残る。良型だ。無理に引き剥がさず、竿の反発を使って丁寧に引き抜いた。姿を現したのは17cmのメスのマハゼ。抑えた色合いの体表に、わずかに銀の光が差し込む。華やかさはないが、落ち着いた美しさがある。
かなり大きなハゼをキャッチ(提供:TSURINEWSライター・HAZEKING)即合わせはNG
イソメは半分ほど噛み切られていた。活性が高い時期なら一気に吸い込むが、この時期は慎重に、段階を踏むように捕食する。即合わせでは応えてくれない。渋い状況の中、正しく間を取れた1尾だった。
当日最大20cmマハゼ浮上!
潮位が下がり、波消ブロックの二段目が水面から顔を出す。視界は良くなるが、同時に魚の警戒心も高まる。使用していたハリス1号では違和感を与えたのか、反応が途絶えた。そこで0.5号へ落とす。
すると着底直後、ほとんど動かない違和感が竿先に残った。明確な重みがある。大型の気配だ。ここでも焦りは禁物。根に入られないよう、ゆっくりと浮かせて中層へ誘導する。
反転して逃げに転じた瞬間を見逃さず、鋭くフッキング。水深わずか50cmを一気に抜き切った。上がってきたのは20cmのメス。濃く浮かぶ斑紋と荒れた鱗が、この場所で生き抜いてきた時間を雄弁に語る。“野に生きた証”をまとった1尾だった。
今季のハゼ釣りを締めくくるに相応しい魚だ。傾き始めた陽を背に、ここで竿を畳んだ。
さらにサイズアップ(提供:TSURINEWSライター・HAZEKING)最終釣果
最終的な釣果は20cmを頭に5匹。条件は厳しかったが、冬の落ちハゼを確実に捉えることができた。いずれも成熟が進み、簡単には口を使わない個体ばかりだ。その分、釣り人の判断と技量が結果に直結する。数を追う季節は終わり、1尾の価値が際立つ時期。覚悟を持って挑んでほしい釣りである。
アタれば大きい冬の落ちハゼ(提供:TSURINEWSライター・HAZEKING)
<HAZEKING/TSURINEWSライター>


