日本近海で増えつつある「磯臭い魚」。美味しく食べるための黄金のメソッドに「素揚げ」があります。
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磯臭さって一体なに?
南方系の魚、あるいは岩礁帯につく「根魚」と呼ばれる魚たちの中には、一定数「ニオイが気になる」ものが混じります。
そのニオイの成分はトリメチルアミンやジメチルスルフィドなどで、これらは打ち上げられた海藻、あるいは炎天下に晒された海岸の石のような、独特のこもったような悪臭があります。一般的にこのような匂いは「磯臭さ」と表現されています。
この磯臭さがあるかないかで、食用魚の価値は大きく変わってしまうほど。外見からは分かりにくかったり、同じ場所で獲れたものでも臭い個体とそうでないものがあったりするのでとても厄介な存在です。
素揚げ+バターソースで磯臭い魚を美味しく
一般的に、南に行けば行くほど磯臭い魚が増える傾向にあります。その理由はハッキリとはしていませんが、アイゴやイスズミのような海藻食性の魚が南方系であることはそのひとつと言えそうです。
そして、これらの魚を好んで食べる南西諸島、あるいはポリネシアの地域では、美味しく食べるための簡単なメソッドが知られています。それは「素揚げ」。
内臓と鱗を除去した魚を、衣をつけずにじっくりと素揚げします。バターを溶かし、スライスニンニクを入れて香りをつけたソースを揚げた魚にかければ、ニオイの全く気にならない美味しい一皿が出来上がります。
素揚げ+味噌汁も美味しい
魚の磯臭さは、多くの場合皮や皮下脂肪、そして内臓周辺から強く感じられます。これはすなわち、磯臭さの成分が脂に含有されているということです。
衣をつけずに素揚げすると、磯臭い脂肪が魚体から溶け出し、揚げ油の方に移っていきます。その結果、身の方の臭みが薄まり、食べやすくなるのだと考えられます。
沖縄県では、素揚げにした魚を水から煮て味噌を溶き、味噌汁を作ることがあるそうです。磯の魚はゼラチン質を多く含み、臭みさえなんとかできれば汁物の具としては最高です。揚げることによって少し脂っぽくなっても、味噌汁にすると良いコクとなります。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>