今回は、ボートショー2024「海ゼミ」講義の前編「カヤック購入時のポイント」をまとめたものをご紹介します。今まで筆者が執筆したカヤックの解説記事をまとめた内容にもなっていますので、最後まで読んでいただければうれしいです。
後編『カヤックフィッシング入門前に知っておくべき【5つのポイント】徹底解説 「海ゼミ」後編』を読む
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(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・福永正博)
ボート釣りとカヤックフィッシングの違い
まず、釣りをするためにカヤックを購入するかで悩んでいる段階で、ライバル候補となるのは2馬力ボートでしょう。
カヤックとボートの一番の違いは、なんといっても動力がエンジンか人力かという点ですが、それ以外にも様々な違いや共通点があるので見ていきましょう。
出艇する場所
出艇場所の選び方のポイントを3つご紹介します。カヤックよりも重量があり、荷物も多くなるボートの方がよりシビアに場所を選ぶ必要があります。
1つめは、なだらかな海岸があること。
当然ながらガケや垂直な岸壁からの出艇は不可能なので、なだらかな海岸が必要です。ゴロタ浜は、船底が傷付いたり転倒したりしやすいので砂浜がベター。
ただし、フカフカの砂浜で長い距離を移動するのは大変なので、理想的なのは地面は固いが大きな岩が転がっていないジャリ浜でしょう。
また、使用料を支払うことで、スロープからボートやカヤックを出艇可能な漁港もありますが、かなりのレアケースといえます。
2つめは、駐車場が近くにあり、海岸まで障害物が無いこと。
魅力的な海岸があっても、車で近くまで運搬できなければ実質的に出艇は困難になってしまいます。また、駐車場から海岸までの間にフェンスや階段、急斜面がある場所も同様です。この場合はボートやカヤックよりもかなり軽量なSUPなどでないと出艇困難でしょう。
3つめは、おだやかな海域であること。
外海に面したサーフなど風や波が高い傾向のエリアではなく、湾内のおだやかなエリアであることが望ましいです。エンジン付きボートなら少々荒れても大丈夫と考えるのは危険。波・風が強いと2馬力ボートでも帰着困難になるケースはあります。
また、出艇・着岸の時が最も転覆しやすいタイミングなので、波打ち際がおだやかなことが要チェックポイントです。
体力と機動力
体力と機動力に目を向けると、海上で優位なのがボート、陸上で優位なのがカヤックといえます。陸上では、自重が軽いカヤックの方が体力を使わず機動力もありますが、海上ではやはりエンジン付きのボートの方が体力を使わず広範囲に移動できます。
どちらにしても、出艇までと釣りを終えて戻るまでの過程がキツいと体力を使うことになるので、適切なドーリーなどを使用して、陸上で引っ張る際の抵抗をなるべく減らすことが体力を使わないコツといえるでしょう。
また、車で運搬すれば全国どこへでも遠征できるボートとカヤックは、特定のマリーナからしか出艇できない大型船にない、広い意味での機動力があるともいえますね。
車で運ぶ方法
ボート・カヤックともに、車の屋根に載せる「カートップ」が一般的な運搬方法です。大きなワンボックスカーであれば、車内積みも可能。また、種々のハードルはかなり高くなりますが、トレーラーけん引による運搬も選択肢の一つです。
準備と片付け
出艇前と着岸後にどうしても付いてまわるのが準備と片付け。カヤックの方が装備がシンプルなのでラクに早く済みます。カヤックは慣れれば30分ほどで出艇準備完了。
片付けは、船体だけでなく釣具も含めて塩水に浸かったもの全てを水洗いするので準備よりも大変ですが、1時間もあれば完了します。
一方でボートは、カヤックと同様の作業に加えて、燃料の準備やエンジンの塩抜きなどが必要なので準備・片付けともに時間がかかります。
ゴムボートの場合は、空気を入れる時間と空気を抜いてたたむために、さらに時間がかかります。最低でも1時間以上かかると考えておきましょう。
メンテナンス方法
メンテナンスに関しても、カヤックよりボートの方が大変です。
釣行後の片付けと同様に、メンテナンスでも大事なのは塩分をしっかりと洗い流すことです。とくにエンジンに関しては塩抜きしておかないと、内部の腐食などによって性能や寿命に影響してくるので手は抜けません。
また、エンジンである以上、定期的なオイル交換や消耗部品の交換も必要です。
カヤックの場合は、船体やパドル、小物類を真水で洗って乾かすだけでOK。足漕ぎカヤックであれば、ドライブユニットの塩抜きと注油までしておけば万全です。
保管場所
ボートもカヤックも、保管するにはそれなりのスペースが必要。贅沢をいえば、風通しが良く日光が当たらないガレージのような場所が理想的といえます。
とはいえ、住環境によってはそれが困難な場合も多いでしょう。一戸建てはともかく、マンション住まいの方は貸しコンテナなども考慮する必要があるかもしれません。
どうしても保管場所が確保できない場合は、インフレータブルタイプのカヤックやゴムボートなどを候補に入れてみるのが良いでしょう。
知っておくべき知識
2馬力ボートやカヤックは船舶免許が必要ないため、ルールを勉強することなく海に出てしまいがちです。
ボートやカヤックで海に出ると、オカッパリでの釣り座争いとは無縁で、自由で開放的な気分になれるのが良いところ。ですが、海上には海上ならではのルールやマナーがあるので、最低限のルールやマナーは学んでおく必要があります。
大型の輸送船や漁船が行き交う航路での釣り、イケス・ブイにロープを結んでの釣りは御法度です。遊漁船の近くに寄って釣りをするのも迷惑な行為です。そのエリアでのカヤックやボートでの釣り自体が禁止になってしまう可能性が大いに考えられるため、絶対ダメな行為と心得ましょう。
また、エンジン付きのボートで海に出るので、エンジン関連の機械的な知識も必要です。海上でのトラブルにある程度対応できないと、ちょっとしたことで帰着困難になってしまいます。