今回は、ボートショー2024「海ゼミ」講義の前編「カヤック購入時のポイント」をまとめたものをご紹介します。今まで筆者が執筆したカヤックの解説記事をまとめた内容にもなっていますので、最後まで読んでいただければうれしいです。
後編『カヤックフィッシング入門前に知っておくべき【5つのポイント】徹底解説 「海ゼミ」後編』を読む
カヤックフィッシング特集ページで見る。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・福永正博)
1.フィッシングカヤックの種類
海でのカヤックフィッシングに使用されるのは、基本的にシットオンと呼ばれるタイプ。船体内に気室を備えているので、万が一ひっくり返っても沈んでしまうことはありません(ドレンプラグの絞め忘れなどは除く)。
中に乗り込む形のシットインタイプは、転覆後の再乗艇やその後の水抜き作業が難しいため、水面がおだやかな湖沼や河川、岸から近い湾内での使用に限られると考えておきましょう。
手漕ぎと足漕ぎ
元来カヤックとは、両側にブレード(水かき)が付いたパドルで漕ぐ小舟のこと。その意味では、手漕ぎカヤックというのも少し変な感じもしますが、足漕ぎカヤックの登場により、手漕ぎ・足漕ぎと呼んで区別しています。
手漕ぎカヤックは、使いこなすまでにある程度の練習が必要ですが、足漕ぎカヤックは初心者でもすぐに漕ぎ出せる手軽さがあります。また、両手がフリーになる足漕ぎカヤックは、釣りのしやすさにおいて手漕ぎカヤックを上回るといって良いでしょう。
とはいえ、必ずしも全てにおいて足漕ぎカヤックの方が優れているわけではなく、双方に得意・不得意があります。それぞれの特性をよく理解し、自分がよく行くフィールドに合ったカヤックを選択することが大切です。
素材の種類
フィッシングカヤックの素材は、ポリエチレン、ABS、FRPなど様々ですが、最もメジャーなのはポリエチレンといえるでしょう。
ABSやFRP艇の方が軽量なカヤックにしやすいメリットはありますが、その反面ポリエチレンより衝撃に弱い側面もあります。
1人乗りと2人乗り
フィッシングカヤックには、1人乗りと2人乗りがありますが、一般的には1人乗りが多数派といえます。2人乗りカヤックのメリットは、動力が2倍になることや、釣り中に体験した出来事を間近で共有できること。
1人乗りカヤック複数艇で釣りに行っても、海の上では結局バラけてしまったり、カヤック同士がゴツゴツぶつかったりするので、間近で話をしながら釣りをすることはなかなか難しいものなのです。
2.フィッシングカヤックの大きさ&重さ
続いて、フィッシングカヤックの大きさ&重さについて解説します。
大きさ
海でおこなうカヤックフィッシングでは、ある程度の走破性を確保したいので、最低でも3m以上の長さが欲しいところ。いろいろなフィールドで不安なく出艇したいのであれば3.5m以上が望ましいですね。もちろん、機種ごとの特徴による部分ではあります。
重さ
フィッシングカヤックの重さは、軽いもので20kg前後から、重たいものは40kg超えのものまで様々。一般的に、安定性重視で幅が広いモデルが多い足漕ぎカヤックの方が重くなる傾向があります。
20kgくらいであれば、頭上に持ち上げることもそれほど苦ではありませんが、30kgを超えてくるとかなり難しくなってくるイメージです。
3.フィッシングカヤックの価格
フィッシングカヤックの最低価格は、10万円以上と考えてください。たしかに、市場を見渡せば10万円以下の激安カヤックもあるのですが、品質やアフターサービスの面からあまりおすすめはできません。
激安カヤックは、手放す時も買い手がつきにくく、結局高額な処分代がかかってしまうこともあるので注意が必要です。
おおむね30万円を超えるモデルになると、ハイエンドモデルの部類に入ってきます。それ以上はどこまで釣りのしやすさや快適性を求めるかによりますが、100万円近いフィッシングカヤックも存在します。
4.エントリーモデルとハイエンドモデルの違い
ここでは、フィッシングカヤックのグレードについて解説します。
重さ
カヤックの重さに関して、あえて傾向を分けると、エントリーモデルは軽め、ハイエンドモデルは重めといえます。ハイエンドモデルの方が、装備が充実している分どうしても重量がかさみがち。
カヤックの重さは水に浮かべてしまえばあまり気になりませんが、陸を移動させる時には大きな影響があります。カヤック入門者がいきなり重たいハイエンドモデルを買うと、カヤックフィッシングの楽しさを知る前に、重さが原因でイヤになってしまうかもしれませんね。
ただし、エントリー・ハイエンドといってもメーカーや機種によって様々なので、事前によく調べておくことが大切です。
走破性
フィッシングカヤックの走破性に大きく関わるのは、カヤックの全長で、長いほど走破性が上がります。
一般的にエントリーモデルは、軽さや扱いやすさを重視するため全長が短めの傾向があります。入門用として、岸から近いおだやかな水域での釣行を前提にしているともいえるでしょう。
それに対してハイエンドモデルは、全長が長めで走破性が高いモデルが多く、長い距離を漕いで沖まで出ていくハードな使用状況を考慮しているといえます。
とはいえ、荒れた海の上ではハイエンドモデルといえどちっぽけで無力な存在ということを忘れてはいけません。
安定性
エントリーモデル・ハイエンドモデルともに、安定性に関してはカヤックの全幅と重心の低さが大きく影響します。
あえていえば、エントリーモデルは安定性重視の傾向があり、ハイエンドモデルの中にはスピードや走破性を重視した「尖った」モデルもあるといったところ。
どちらにせよ、フィッシングカヤックである以上、常にグラグラして怖い思いをするようなカヤックは無いと思って良いでしょう。
釣りやすさ
カヤックフィッシングをする以上、釣りやすさにはこだわりたいところ。エントリーモデルとハイエンドモデルで大きな違いを感じるのが釣りのしやすさでしょう。
エントリーモデルを買って、必要になったら艤装(カスタマイズ)すれば良いと考えるのは、とても賢くて合理的に思えます。
ただし、ロッドホルダーなどの小物アイテムはともかく、移動スピードや収納スペースの豊富さ、バック機構の有無など、艤装だけではどうにもならない部分もあるので悩ましいところですね。