ごく少量しか撮れないことから「幻のエビ」と呼ばれる高級エビがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「ブドウエビ」の水揚げが最盛期
青森県太平洋側の一大漁業基地として知られる八戸港。ここで先月、「幻のエビ」と呼ばれるエビのまとまった水揚げがあり、ちょっとしたニュースになりました。
そのエビとは「ブドウエビ」。甘エビとして知られるホッコクアカエビなどと同じタラバエビ科に属し、やや深い海に生息します。
今回は八戸沖の水深400mほどの場所から水揚げされた51kgのブドウエビが競りにかけられ、1kgあたりなんと15,000円の高値が付いたそうです。
浜値でこの価格であれば、1匹あたりの小売価格は数千円にのぼると見て間違いないでしょう。ブドウエビは寿司ネタとしての評価が高いため、おそらくまっすぐに高級寿司店に卸されるのではないかと思われます。
本名は「緋衣海老」
このブドウエビですが、実は標準和名はヒゴロモエビといいます。漢字で書くと緋衣海老となり、ブドウエビとはちょっと印象が異なるように感じますが、これも理由があります。
このエビ、実は生きているときは美しい朱色がかった赤色をしているのです。しかし多くのエビが死ぬと色が変わるのと同じように、このエビも死ぬと変色し、背中の方から徐々に紫色になってしまうのです。
ブドウエビって変な名前?
そういうわけでこのヒゴロモエビ、競りにかけられる際にはすっかりぶどう色になってしまっており、このような通称がつけられたのです。ちなみに同属に標準和名ブドウエビもいるため、分類学上は非常に紛らわしい名前となっています。
またそもそも、エビというのはブドウを表す言葉。動物のエビを加熱すると美しい赤色になりますが、これがブドウの果汁や紅葉したブドウの葉の色にそっくりであったため、動物の方もエビと呼ぶようになったと言われています。
したがって「ブドウエビ」は語源的にはちょっと変な名前と言えるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>