ソーセージを始め「ガッツリ肉料理」のイメージが強いドイツ。ハレの日であるクリスマスも当然ガッツリ肉を食らうかと思いきや、そういうわけでもないようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ドイツの魚食事情
ヨーロッパの大国ドイツの料理のイメージと言えば、ソーセージやパテ(ケーゼ)に代表される肉料理。ドイツ国民の一人あたり平均年間肉類消費量は60kgにもおよび、これは日本の4倍弱の数値です。
そんな肉食大国ドイツでも、もちろん魚介料理は食べられているものの、肉と比べれば圧倒的にマイナーであるところは否めません。これはそもそもドイツの国土があまり水面と接していないことが理由であり、魚介類の水揚げが少ないために必然的に消費量も少なくなっているのです。
内陸に向かって広がる国土の形状もあり、比較的食べられているものといえば保存食であるニシンの酢漬けや燻製、サーモンの缶詰のようなものになるといいます。
ドイツでクリスマスに魚を食べるわけ
そんなドイツでも、1年の中で比較的多くの魚が消費されるタイミングがあります。それはなんとクリスマス。
クリスマスといえば我が国では「1年で最も(鶏)肉料理が食べられる日」というイメージですが、肉食国ドイツでは逆に「肉料理を避け、魚を食べる」日になっているのだと言います。
これにはいくつかの理由があると言われていますが、一番大きいのはドイツにキリスト教徒が多いこと。キリスト教では魚は聖なる象徴となっており、ヨーロッパの各地でイエス・キリストの生誕祭であるクリスマスに魚を食べる文化があります。
またそれ以外にも、中世の修道院では厳格なキリスト教信仰の一環として「断食」が行われていたのですが、この断食とは「肉を食べないこと」であり、代替のタンパク質として魚が食べられていたことが現代に残っている、というのもあるそうです。
一番人気は「鯉」!
そんな「ドイツでクリスマスに食べられる魚」の中でいちばん人気なのはなんといってもコイ。魚食大国である日本ではコイの消費量が減っている一方で、肉食国であるドイツでコイの消費量が多いと聞くと意外に思う人は多いでしょう。
ドイツは海面が少ない一方で、ライン川やマイン川、ドナウ川などのような大河が国内に何本も流れています。そのため淡水魚であるコイは、内陸部では歴史的にも比較的身近な食材だったのです。
ドイツではコイは一般的にフライや揚げ焼きにして食べられていますが、クリスマスには「カルプフェン・ブラウ」という料理が作られます。これは直訳すると「青い鯉」という意味で、はじめにワインビネガーでコイをマリネすることで皮の成分と酢が反応し青くなることからこのような名前があります。
マリネしたコイを白ワインで香草とともにじっくり煮たこの料理、酢の力でコイの泥臭さが消され、白ワインと香草で魚臭さも消しているため、イメージよりも遥かに食べやすくなっています。ドイツのやや甘い白ワインと合わせると本格的なドイツのクリスマス気分を味わえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>