夏に旬を迎える魚「ソウダガツオ」。その一種である「ウズワ」でつくる、夏にぴったりの美味しい料理をご紹介します。
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夏とともにやってくる「じゃない方のカツオ」
関東地方から西の太平洋沿岸では、盛夏になるととある「カツオ」が潮に乗ってやってきます。それは「ソウダガツオ」。
大きな群れで接岸し、海面直下を高速で泳ぎまわりながら餌を探す様子は陸上からも視認できるほど。騒々しいほどにたくさんいるので「そうだ」と名付けられたという説もある魚です。
ソウダガツオは名前に「カツオ」とつくものの、一般的に知られる本カツオとは実はグループが違っており、分類学上は全く別の魚です。それでも高速遊泳に適応した弾丸のような見た目は、まるでミニチュアのカツオのようです。
「ウズワ」と「シブワ」
そんなソウダガツオですが、実は2種類存在します。やや沖合に多い「マルソウダ」と、どちらかというと沿岸に多いとされる「ヒラソウダ」です。
この2種はしばしば混合した群れを作り、見た目もそっくりなので区別が付けられていない人が多いようです。しかし外見は似ていてもその味や用途は大きく異なるため、この2種は流通の現場では全く別物として扱われます。
ソウダガツオの水揚げが多い静岡県伊豆地方(特に東伊豆)では、マルソウダをウズワ、ヒラソウダをシブワと呼び分けており、扱いから値段まではっきりと差が付けられています。
「うずわ飯」とはどんな料理か
この2種のうち、一般的に珍重されるのはヒラソウダのほうでしょう。血合いが少なくさっぱりした夏らしい味わいで、生食してもとても美味しいです。
それと比べるとマルソウダは血合いの量が非常に多く、鮮度落ちもより早いことから生食は敬遠され、宗田節など加工品にされることが多いようです。
しかし生のマルソウダで作らないと美味しくない料理が東伊豆にあります。それは「うずわ飯」。新鮮なマルソウダを血合いごと細かくミンチ状にたたき、みじん切りにした青唐辛子を混ぜてご飯に乗せる、という料理です。
血合いのこってりとした風味と酸味が、青唐辛子のさわやかな辛さと非常によくマッチし、ご飯がいくらでも食べられてしまいます。ご飯に乗せず単体で焼酎のあてにするのも最高です。
うずわ飯は、水揚げされたばかりの新鮮なマルソウダがないと食べることができないまさにご当地の味。釣り人でない限り家庭で作ることはなかなか難しいでしょうから、もし東伊豆に行く機会があればぜひ食べてみてください。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>