魚の中には「キツネ」の名を冠するものが数多くあります。これらの魚にはいったいどういう特徴があるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
陸上生物の名がつくサカナ
魚は水中に暮らす生物ですが、陸上に暮らす生物たちの名前を関するものが少なくありません。軽く例を挙げてもチョウチョウウオ、オオカミウオ、ツバメウオ、カラスガレイなどいくらでも列記することが可能です。
とくに多いのは軟骨魚類であるサメの仲間で、ネコザメ、トラザメ、イヌザメ、イタチザメ、カラスザメなどこちらも枚挙にいとまがありません。
これらの魚はシルエット、模様、性質、大きさ、印象など様々な点でその生物をほうふつとさせるために、そのような名前が付けられています。
不思議なベラ「キツネダイ」
そのような「動物の名前を関した魚」のひとつに「キツネダイ」がいます。
キツネダイはマダイをほうふつとさせる赤系の色合いを持つ魚で、魚に詳しくない人であればタイと呼ばれることにも違和感を持たないと思います。しかしよく見ると、キツネダイはタイ類と比べると明らかに体高が低く、そして口(吻)が細長く伸びているので違うとわかります。
実はキツネダイはやや大型のベラの一種で、タイではないのにタイと呼ばれるいわゆる「あやかり鯛」のひとつです。夏に旬を迎える魚で、水っぽいものが多いベラ科にしては身が締まっており、とても美味しい魚です。
ベラ科の魚には安価なものが多いですが、キツネダイはその色合いの良さと、フレンチの材料としての適性から、やや良い値が付く魚となっています。
キツネと名がつくサカナたち
さて、このキツネダイに限らず「キツネ」と名の付く魚は少なくありません。標準和名に絞ってもキツネアマダイ、キツネフエフキ、キツネベラなどがあり、地方名まで含めれば数えきれないほどです。
しかし彼らがなぜキツネと呼ばれているのか、ものによっては想像が難しくなっています。多くの「キツネ」魚は前記のキツネダイのように吻が長く伸びており、同じく吻の長いキツネの顔に例えて名づけられています。
しかし中にはキツネメバルのように、近縁種と比べてもとりたてて吻が長いとは言えないものもいます。これに関しては、その体色がキツネの毛皮のように黒いことが由来という説があります。
よりわかりにくいのは、カレイ科の代表種マコガレイ。こちらもキツネと呼ばれていますが、カレイの中ではむしろ吻が短く、また体色もとりたてて濃くはありません。
このほかにもいまいち由来のわからない「キツネ魚」がおり、出会った際には想像力を膨らませる必要に駆られます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>