海で自然相手に怖い思いをすると、怖さが身に染みるもので、その積み重ねが小心者をさらに小心者にして、「あつものに懲りてなますを吹く」のような小心者の怖かったお話と間抜けなお話をします。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター丸山明)
背後から迫って来た霧
春と秋は霧が発生しやすく、海上での遭遇もあり、濃霧では視界を失い、突然に方向感覚を失います。航行中に前方に霧が見えたら迂回をするか引き返せばよいのですが、釣りをしている時に、はるか遠くから音もなく風に乗って来る霧に突然包まれることがあります。
周囲にわずかでも霧が出たら、今では何であれ即刻風下に向かい、まずは霧から脱出しますが、経験不足の頃は、アラーッと思う間に完全に包まれ、方向感覚を失い、陸の方向や東西南北の感覚がなくなります。霧の妖怪オンボノヤスに襲われたらしいような魔界に行ったようです。
GPSがあるので、その海図で動くことができますが、そりゃ怖いです。神になったような気なのか、全速で走る漁船の音が聞こえれば、怖さは倍増です。小型艇の多くはレーダー装備がないし、相手のレーダーにも映りにくいもので、耳をそばだてて低速で這う這うの体で逃げ、霧を抜け出た時の安堵感に覚えがあります。怖い目にあって覚えたのは、「霧は魔界、風下に逃げる」でした。
いきなりの暴風雨
真夏のシロギスを家島諸島で釣っていました。朝から天気は晴れて上々です。すると、ひんやり冷たい風が吹き、心地よく感じひと息しながら西の空を見ると、怪しげな真っ黒な雲が近づきます。しまった!とにかく逃げろで、帰港方向に全力で走りますが、風神か妖怪風の三郎かに追いつかれ、左舷側から風を受け、当て舵で艇体が斜めになります。波は出てくるしで、ちょっと怖いを超えています。
ふと閃いたのは、この先の鞍掛島に南を向いたワンドがあり、そこへ逃げればこの風は防げる。左舷からの風で右へ転進はドキドキでしたが、ワンドに入った時は、いやはやホッとしました。この風は、風神雷神や鬼太郎の世界の妖怪が、暑さでイラついて癇癪玉を破裂させたように暴れましたが、過ぎ去るのをワンドで待つと普通の晴天に戻りました。
霧も速いですが、この黒雲はもっと速く襲ってきました。西や北西から襲ってくる突然の黒雲は、逃げるしかありません。
霧も黒雲も発見が早ければ対処もできます。本当に怖いものですので、釣りに熱中しながらも周りの状況には常に気を付けたいものです。