静岡にある日本有数の汽水湖・浜名湖。各地の汽水湖同様にカキの養殖が盛んに行われていますが、近年そのカキがピンチに陥っています。
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牡蠣の一大産地・浜名湖
世界中で冬の味覚の代名詞となっている牡蠣。英語圏では「Rのつく月(9月~4月)」に美味しくなるとされ、我が国でも鍋物など冬の料理に欠かせない存在です。
牡蠣のうち、代表品種といえる「マガキ」は牡蠣の中でも塩分濃度の低い水域を好む種で、サロマ湖や厚岸湖など、海とつながる汽水湖に名産地が多くなっています。
静岡県にある日本で4番めに大きい汽水湖・浜名湖も同様の条件を持ち、地元では牡蠣の名産地としてよく知られています。獲れる牡蠣は肉厚で濃厚な味わいが特徴で、130年以上も養殖が続けられている歴史ある産地です。
牡蠣が「黒潮」でピンチ
そんな浜名湖の牡蠣養殖ですが、実はいま危機に見舞われています。近年、浜名湖の牡蠣養殖は深刻な不漁に襲われているのです。
長らく浜名湖の牡蠣の漁獲量は例年80tほどで推移していましたが、3年ほど前からじわりじわりと減少。去年はわずか8tと、例年の10分の1にまで落ち込んでしまっています。
その大きな原因として目されているのが、浜名湖のある静岡県西部の沖合を流れる暖流「黒潮(日本海流)」です。近年日本の沖合では黒潮が通常と違う流れになる「黒潮大蛇行」が続いてるのですが、これが起こると静岡県沿岸に、黒潮本流から反転し北上する流れが発生し、静岡県沿岸の海水温が上がることが知られています。
これに伴い、海に直接つながる浜名湖の水温も上がっています。冬の低水温期に大きく成長する声質を持つ牡蠣には、これが大きなダメージとなると考えられているのです。