水鳥の一種「ウ」を利用してアユを漁獲する「鵜飼」。そのなかでも最も知名度の高い「長良川鵜飼」が何度かの延期を経て今年も開始されました。
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「長良川鵜飼」が開幕
日本三大清流のひとつとして名高い長良川が流れる岐阜県岐阜市。ここで、夏の風物詩であり、1300年以上続く伝統漁「長良川鵜飼」が、今年も開幕しました。
例年では5月11日~10月15日の期間で行われる長良川鵜飼ですが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開始が3度延期され、6月下旬スタートとなりました。
開幕日の6月21日は、午後7時45分ごろに鵜飼が始まりました。アユを追うために焚かれる篝火が海面を照らす中、腰蓑を着けた鵜匠が、鵜を手縄で操りながら「ホ、ホ、ホ、ホウホーラ」と声を上げて励まし、アユを次々と漁獲しました。(『コロナ下、長良川鵜飼開幕 岐阜市で船内飲食も解禁』共同通信 2021.6.21)
鵜飼とは
鵜を使って鮎を獲る伝統漁法・鵜飼。稲作とともに中国大陸より伝えられたと言われており、万葉集にも鵜飼のことをよんだ歌が掲載されているほど歴史のある漁です。鵜飼をする人は鵜匠(うしょう)と呼ばれ、その装束も烏帽子や腰蓑など昔ながらの古式にのっとったものとなっています。
鵜飼漁では、まず船の舳先で篝火を焚き、それに驚いたアユがパニックになっているところに、飼いならしたウミウを放ちます。ウミウはアユを見つけると噛んで飲み込もうとしますが、首がひもで軽く縛られているため、ある程度以上のサイズのアユは飲み込めません。この状態のウを船に戻し、アユを吐き出させて漁獲とします。
小さいアユは飲み込める程度にゆるくひもをかけるのが、鵜のやる気を継続させ、たくさんアユを漁獲するためのコツなのだそうです。
鵜飼のアユが珍重されるわけ
日本の鵜飼に使われる鵜は、アユを常食するカワウではなく、海水魚を常食するウミウです。なぜわざわざウミウを使うのかというと、カワウと比べ性質がおとなしく、またサイズが大きく漁獲力が高いためだそうです。
鵜飼のウミウは、アユを見つけるとひと噛みしてから飲み込むのですが、このときにアユは瞬時に絶命します。そのためアユが活け締め状態になり、鮮度が保たれたまま漁獲され、水揚げされるのだといいます。
また、鵜飼でとれたアユは噛みつかれたあとがあり、これが品質を保証する印にもなっているのだそう。鵜飼でとれたアユが長らく珍重されてきたのは、歴史があることに加え、採れたアユが美味しかったから、というわけなのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>