魚介類の「食べるな危険」部位:冬が旬のツブ貝は別名『酔っ払い貝』?

魚介類の「食べるな危険」部位:冬が旬のツブ貝は別名『酔っ払い貝』?

冬になると鮮魚店の店頭を賑わせる、メカメカしくてかっこいい貝・バイ貝。いくつかの貝類の総称でもありますが、実は「口にしてはいけない部位」が存在します。

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冬が旬のツブ貝

冬の寒さが厳しくなると、スーパーの鮮魚コーナーにやたらと存在感のある大きな巻き貝が並びます。形や大きさは様々ですが、いずれも「〇〇ツブ」という名前がつけられていると思います。

魚介類の「食べるな危険」部位:冬が旬のツブ貝は別名『酔っ払い貝』?「ツブ貝」には様々な種類がある(提供:PhotoAC)

「ツブ貝」は「エゾバイ科」というグループに属する巻き貝の総称となっており、この科に属する食用貝を指す言葉でもあります。北の海に多い貝で、北海道は特に有名な産地となっています。

ツブ貝のうち、もっとも代表的なのが「真ツブ」と呼ばれるエゾボラ。いまや全国的な人気を誇り、関東以南の市場でもまとまって入荷されることもあります。そのほか「青ツブ」と呼ばれる、ヒメエゾボラやムラサキエゾボラ等沢山の種類があり、今の時期に盛んに漁獲されています。

生食が美味しいツブガイ

エゾバイ科の食用貝類は、いずれも刺身で食べて美味しいため、他の貝と比べて市場価値が高くなっています。調理前に身のヌメリをよく落とす必要はありますが、コリコリとして味が濃く、サザエなどと比べると磯臭さも少ないため、万人受けする味わいです。

魚介類の「食べるな危険」部位:冬が旬のツブ貝は別名『酔っ払い貝』?最近は寿司ネタとしても人気(提供:PhotoAC)

また、サザエと比べ「生の状態で身が取り出しやすい」ことも魅力。ツブ貝の殻はその強そうな見た目と比べると意外に薄く、金串などで容易に穴を開けることができます。貝柱の部分に穴を開けて箸などを差し込むと、つるりと身を取り出すことができるのです。

もちろん加熱しても美味で、煮付けやバターソテー、天ぷらなども人気のある調理法です。

「唾液腺」には毒がある

このように、美味しくて人気の高いツブ貝なのですが、その一方で「食べてはいけない部位」が存在しています。それは「唾液腺」と言われる組織。ここにはなんとテトラミンという毒成分が含まれているのです。

実はエゾバイ科の貝類の多くは肉食性で、捕食対象を麻痺させるために唾液に神経毒を含んでいると考えられています。テトラミンを摂取すると、視覚異常やフラつきなどといった症状が発生し、まるで酒に酔っ払ってしまったようになるため、かつてはツブ貝を「酔っ払い貝」などと呼ぶこともありました。

魚介類の「食べるな危険」部位:冬が旬のツブ貝は別名『酔っ払い貝』?解体されたものを購入するというのも手(提供:PhotoAC)

テトラミン自体は毒性が低く、過去に死亡例はありません。中毒しても多くは数時間で回復するそうですが、あまりに大量に摂取すると、昏睡や呼吸困難といった重篤な症状が出る可能性もあるそうです。

魚の中にも、例えばフグのように「内臓に毒を持つ」ものがいますが、内臓と筋肉の境目がはっきりしている魚と違い、貝類の場合はシームレスにつながっているために、捌く際にはよく注意したほうが良いでしょう。

ツブ貝の唾液腺は他の内臓類と異なり「足」と呼ばれる筋肉の内部にあります。「脂身」のような見た目をしているので、慣れれば見分けは容易です。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>