幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?

秋田県・田沢湖のみに生息し、湖水酸性化が原因で1948年に絶滅したとされていた幻のサカナ『クニマス』が、2010年に山梨県西湖で再発見された。これで安泰と思いきや、新たな脅威として「ウナギ」の名前が・・。

(アイキャッチ画像提供:山梨県水産技術センター)

アバター画像 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

クニマスの新たな脅威は「ウナギ」?

2017年時点で西湖には、推定3000尾のクニマスが確認され、2019年には完全養殖も成功しているが、実はまだ解決できていない重大な問題も残っている。

ウナギがクニマスの天敵に

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?クニマスの卵を食べるウナギ(提供:山梨県水産技術センター)

田沢湖では、クニマスの生存を脅かす肉食魚等の天敵が存在していなかった。また西湖でも、ブラックバスやブルーギルをはじめとした外来種とは生息域が異なるため問題はないとされていた。しかし2016年、クニマスの産卵場へ設置した水中カメラに、ウナギがクニマスの卵を捕食している映像が撮影された。そこで同場所のウナギを採捕したところ、外来種の「ヨーロッパウナギ」であることが確認できた。

ヨーロッパウナギは、西湖に1992~2000年の間に放流されたニホンウナギのウナギの稚魚に混じって侵入した可能性が高いと考えられている。

完全養殖が確立し、順風満帆のように思われていたが、「ヨーロッパウナギ」からの脅威に対する効果的な解決策は未だ目途が立っていない。

ヨーロッパウナギの概要

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?ヨーロッパウナギ(提供:山梨県水産技術センター)

名前の通りヨーロッパに広く分布し、さまざまな国で古くから食用魚として利用されている。容姿が日本のウナギと酷似しているだけではなく、産卵のため海へ降り、成長すると川に戻ってくる習性も全く同じである。

しかしニホンウナギとヨーロッパウナギの大きな違いとしては、大きく2つが挙げられる。

・日本ウナギよりも長命
・水温が10度以下では捕食活動ができないニホンウナギと異なり、5度前後でもエサをとる行動がみられる

さらにほかの区域はニホンウナギ13対1ヨーロッパウナギに対し、西湖の産卵保護区内はヨーロッパウナギ6対1ニホンウナギという比率でヨーロッパウナギのほうが多いという結果も出ている。

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?ニホンウナギとヨーロッパウナギの比較(提供:山梨県水産技術センター)

いくつかの捕獲方法が試されている中、2020年1月23日に山梨県水産技術センターがヨーロッパウナギの捕獲に成功した。今後も捕獲試験を続け、効率的な駆除方法が模索していくようだ。

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?使用した漁具(提供:山梨県水産技術センター)

外来種問題は様々な視点が必要

今回は、クニマスの保全の脅威としてヨーロッパウナギの脅威を一部紹介したが、もちろんウナギには罪はない。

近年、放流事業だけに限らず、ペット飼育などで外来種問題が取り上げられているが、そもそも田沢湖でクニマスが絶滅した原因は、人為的な「水力発電所の建設工事」だ。また西湖にクニマスとヨーロッパウナギが生息していることも人為的な「放流」によってである。

どちらも人間の行為が引き起こしたことではあるが、クニマスは資源保護のために保存され、ヨーロッパウナギは侵略的外来種として駆除対象になっている。

今後、今以上に外来種や国内外来種の問題が深刻化していくだろう。我々人類は一歩下がってより慎重に種の保存や環境問題について考えるべきタイミングなのかもしれない。

<四家 匠/TSURINEWS編集部>