幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?

秋田県・田沢湖のみに生息し、湖水酸性化が原因で1948年に絶滅したとされていた幻のサカナ『クニマス』が、2010年に山梨県西湖で再発見された。これで安泰と思いきや、新たな脅威として「ウナギ」の名前が・・。

(アイキャッチ画像提供:山梨県水産技術センター)

TSURINEWS編集部 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

クニマスの概要

クニマス(英名:black kokanee)は、ベニザケ(ヒメマス)の亜種とされ、日本にのみ生息するサケ目サケ科に属する幻の淡水魚だ。もともとは秋田県にある水深423.4mと日本一深い「田沢湖」のみ生息していた固有種だった。陸封型と降海型の両方に分布するベニザケとは違い、クニマスの多くは繁殖を含め一生を湖だけで過ごすと言われている。

伝承等によると普段は田沢湖の水深100~300m付近の深部に生息していると考えられているが、詳しい生態は分かっておらず、現在も調査中だ。というのも唯一の生息地だった田沢湖で水力発電用のダム建設が行われたことによる水質汚染が原因で、1948年に絶滅したとみられていた。尚、以後同湖では発見されていない。

クニマス絶滅の経緯

田沢湖では、1940年に水力発電所を建設。同湖は、世界では17番目に深い湖として有名で、世界で最も深い湖であるバイカル湖に準えて「日本のバイカル湖」と呼ばれているが、流入河川は小規模な沢しかなく、豊富な水量は湖底の湧水が支えているものと考えられている。しかし一般的な、水力発電所では最大使用水量300立方メートル毎秒以上、つまり1立方メートルが約1tなので、300tの水が毎秒必要とされる。一方で田沢湖の貯水量は7.20立方メートル、すなわち7.2tと必要な水量が足りていなかった。

そこで不足分を秋田県を流れる一級河川の玉川から湖に導入する水路が建設された。同川は、玉川温泉の国内屈指の強酸性の源泉(pH1.1)が流れ込んでおり、「玉川毒水」と呼ばれる昔から魚が住めない沈黙の川としても知られていた。

導入後、田沢湖の水質は、急速に酸性化し1940年代後半にはクニマスをはじめとしたあらゆる魚が死滅してしまった。

絶滅したクニマスが生きていた?

実は、水力発電所建設後、クニマスの絶命を危惧した田沢湖の漁師らが山梨県の本栖湖、西湖のほか、滋賀県の琵琶湖など各地の湖や沼に受精卵を送っていた。

1990年代後半に入ると、当時の田沢湖町観光協会(現在は田沢湖・角館観光協会)が、田沢湖の復興と、かつて生息していた特産の淡水魚「クニマス」を観光の目玉にしたいという思いから、「クニマス」の発見に500万円の懸賞金をかけ始めた。しかし残念ながら、クニマスの発見には至らなかった。

クニマス発見の経緯

ところが実に、約70年ぶりに、山梨県内の湖「西湖」で生き残っていたことが京都大学の中坊徹次教授らのグループの調査で分かった。

発端は、メディア等でおなじみのさかな博士こと、さかなクン(東京海洋大学客員准教授)がクニマスのイラストを描く依頼を受け、2010年春に山梨県の西湖で採取されたヒメマスを参考に取り寄せたことから始まる。届いたヒメマスは西湖では「クロマス」と呼ばれる黒一色のもので、地元では「黒いヒメマス」と考えられていた。しかし、違和感を感じたさかなクンが中坊氏に確認、解剖や遺伝子解析が行われ、『クニマス』であることが判明した。

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?クニマスが生き残った西湖(提供:週刊つりニュース関東版編集部)

西湖でクニマスが生きていた理由

先にも記述した通り、絶命を危惧した田沢湖の漁師らが、各湖に受精卵を送っていた。当時受精卵10万個粒が西湖に運ばれた記録が残っており、放流された個体が繁殖を繰り返し、生き残っていたとみられる。

また、西湖はブラックバスなど外来種が生息することでも有名だが、クニマスが生息する水深が異なったため、長期生存できたと考えられる。

クニマスの今

幻のサカナ『クニマス』の苦労が尽きない理由 次なる脅威はウナギ?クニマスの推定資源量推移(提供:週刊つりニュース関東版編集部)

西湖には2017年時点で推定3000尾ほど生息しているとされる。さらに、2019年に「ヒメマス」とほぼ同じ条件で完全養殖も成功したため、生息数の増加が期待されている。今後はもとの生息地、田沢湖にも放流予定だが、水質改善に難航しているため、そちらは未だ目途が立っていない状況だ。

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