日本は四方を海に囲まれた島国であり、季節や場所によってスーパーに並ぶ魚介類も様々だ。今回は、8月に旬を迎える東日本のサカナを紹介します。
(アイキャッチ画像作成:TSURINEWS編集部)
8月の北海道の旬『花咲ガニ』
カニと言えば冬のイメージもあるかと思いますが、この花咲ガニは「夏ガニ」と呼ばれ、8月頃に旬を迎えます。
根室のあたりでしか獲れないことから漁獲量も少なく【幻のカニ】と言われることも。
しかしこの花咲ガニ、タラバガニ同様に、実はカニより足が2本少ないヤドカリの仲間。地元の人によると、あまり大きいものよりも、少し小さい個体のほうが旨味が濃く、美味しいようだ。
見た目はタラバガニに似ていますが、花咲ガニの方が、甲羅のトゲがタラバガニ以上に鋭く、形も花咲ガニはハート型で、タラバガニは三角系をしているので容易に見分けられます。
何よりの違いが、茹でるとタラバよりも赤く色づくことが特徴です。
代表的な食べ方
根室(ねむろ)では郷土料理として、【花咲ガニの鉄砲汁】が有名です。
わかりやすく言うならば、蟹の味噌汁。
ズワイガニやタラバガニ、毛ガニなど、様々な種類のカニがいる中で、花咲ガニはジューシで濃厚な甘みが特徴。またタラバガニとは違い、カニ味噌まで楽しめるので、おすすめです。
「鉄砲汁」とは、カニの身を箸でつついて押し出す仕草が、鉄砲に火薬を詰める様子に似ていたことが由来でこの名前になったようです。
7月の東北の旬『ホヤ』
豊かな漁場のある東北には年間を通して、様々な生き物が水揚げされます。
その中でも、他の地域ではあまり見かけることがないのがこのホヤ。
もともと東北地方で地元の漁師さんが食べていたくらいのマイナーな食材で珍味とされていたものが、宮城県で養殖が始まり、今では全国的にその存在が知られるようになりました。
その見た目から【海のパイナップル】と呼ばれることもあります。
代表的な食べ方
珍味でなかなか食べる機会がないと思うので、ホヤをしっかりと味わってほしいということからオススメなのが【ホヤのお刺身】。
一口食べると、まるで海そのものを食べているかのような磯の香りと、独特の味わいが口いっぱいに広がるでしょう。
プルプルとした食感も楽しめるかと思います。
実はホヤには味覚の基本要素がすべて揃っており、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味を一度に感じることができる珍しい食材なのです。
なんとも不思議な味わいですが、一度ハマるとやみつきになるというのがよく分かります。
7月の北陸の旬『トビウオ』
「飛ぶ魚」として知られるトビウオ。北陸地方では夏に旬を迎えます。
意外と知られていませんが、実は日本近海には約30種のトビウオがいます。中でも北陸で捕れるトビウオは「ホントビウオ」という種類で 「アゴ」という別名を持っています。ちなみに「アゴ」の名前の由来は「顎(あご)が落ちるほど美味しい」など諸説あります。
トビウオの食味は、運動量が多いため、脂が少なく身は淡白ですが、高タンパク、低カロリーというヘルシーさに加えて、ビタミン類やミネラル類は豊富に含まれています。
まさにアンチエイジングに最適な魚で、【若返りの魚】と呼ばれることもあるのだとか。
代表的な食べ方
アゴにはおすすめの2つの食べ方があります。
先ず、アゴといえば【アゴだし】が有名で、食べる食材というよりは出しを取るため食材というイメージが強いかもしれません。
実際にアゴだしはダシの中でも高級品として扱われています。
ダシではなく食べる場合は、淡白な味をしていることから、少し濃い味付けの【なめろう】や【たたき】がおすすめ。
透明感のある白身でイヤミがなく、イワシやサンマのような青魚特有の生臭さもほとんどありません。
一度食べ始めたら、トビウオと味噌、薬味の作り出すハーモニーに箸が止まらなくなることでしょう。
7月の東海の旬『大アサリ』
愛知県の渥美半島で獲れる【大アサリ】。
日本でも穫れる産地は少なく主に、三河湾などで水揚げされますが、知名度は低くローカル食材と言えます。
この貝の正式名称はウチムラサキ貝。大アサリと言われていますが、アサリとは属が異なるので、全くの別種と言っていいでしょう。
見た目では、貝の内側が紫色をしており、その横幅はなんと約10cm。これはなんと大粒のアサリの倍近い数字です。
代表的な食べ方
普通のあさりのように汁ものにするよりは、断然新鮮な大あさりを【網焼き】にするのがおすすめ。
包丁で真っ二つに切り、網で豪快に焼くのが地元でも大定番です。
濃厚な旨味はビールにぴったり。
最近では、貝に残った旨みたっぷりの貝汁に、ご飯・ウズラの卵・ネギ・青海苔を乗せた【雑炊】が流行りだしている。
想像しただけでよだれが出てきますね。
7月の関東の旬『スズキ』
成長とともに、「セイゴ・フッコ・スズキ」と名前を変える出世魚として広く知られるスズキ。一般的には、20~30cm程度の幼魚を「セイゴ」、40~60cmのものを「フッコ」、そしてそれ以上のものを「スズキ」と呼びます。中には、1mを超えるもの存在し、「オオタロウ」と呼ばれたりもします。
関東、特に東京湾で水揚げされたスズキは「江戸前スズキ」と呼ばれ、高級魚として取り扱われています。
北海道南部から九州の沿岸や河川の流れ込む内湾まで広く生息していますが、その中でも千葉県での水揚げ量は全国1位となっています。
代表的な食べ方
以前までは、東京湾で獲れたサカナは工業排水で汚染されていたり、ドブ臭くて食べられたものではないと言われていましたが、近年ではかなり改善され、問題なく、美味しく食べれれるようになりました。
そこでおすすめするのが【スズキの洗い】。
洗いとはそぎ切りにした魚の身を流水に打たせたり、氷水の中でさっと振り洗いをして作る独特の調理法のことを言います。
洗うことにより、鮮度の良さが食感に現れ、クセのある脂分が適度に抜けることにより、さっぱりと食べることができます。
【スズキの洗い】はまさに夏向き。
ぜひ一度食べてみてください!
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>