今日の問診票
釣り人なら誰でも憧れるマグロやヒラマサ、カンパチ、モロコといった大物釣り。 ベテランアングラーは手巻きリールで行う方が多いのですが、先生は電動リールを使われているようですが、手巻きでは行わないのですか?大物釣りでの電動リールのメリットを教えて下さい。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤惣一郎)
診断結果
ご質問ありがとうございます。8月1日、いよいよ今年も相模湾のコマセキハダ・カツオが開幕しますね。ヒットした魚を電動に力を借りず、手巻きリールで正々堂々魚と勝負。この考え方は釣りの基本であり、それにこだわり大物とやりとりされるアングラーに私も敬意を抱いています。 確かに私は通常大物釣りに手巻き両軸リールは使わず電動リールを使用しています。最近の電動リールはパワーも増し、しかも軽量になり機動性、操作性もどんどん進化しています。釣り経験の浅い方、筋力、体力の無い人でも、電動リールのパワーのお陰で手巻きリールなら釣りあげられないような大きな魚、力の強い魚を釣りあげることが出来るようになってきました。 でも私は筋力、体力の無い人間ではありません。
処方箋
ではなぜ電動リールを用いるのか。それは“巻き上げが楽”という単純な理由ではありません。今回は私が大物釣りで電動リールを使っている理由、電動リールのメリットとそれをフル活用するための知識や心得、注意点をお話ししたいと思います。 大物釣りのベテランアングラーが手巻きの両軸リール、とくにレバードラグリールを好んで使用する理由は、最大ドラグ力の高さや優れたドラグ調整能、スプールフリーでの快適な回転性能、軽量で機動性が良く負担無く手持ちスタンディングの釣りが一日中あたりまえに行えること、などが挙げられます。裏返せば、これらの点でかつて電動リールは手巻きリールに比べ劣っていたわけです。また大物釣り師は、数を釣るというよりも、魚との一対一の真剣勝負を釣りのテーマにしている方が多いです。電動の力を使わず、自分の力でヒットした魚を釣りあげたいという精神的名部分も手巻きリールを使用する理由です。
それでは、電動リールの活用法について詳しく解説していきましょう。
電動リールの誕生とメリット
1977年、Daiwaのモータ外付けの初代電動リール「ジャイロパワー」が誕生しました。それからおよそ20年後の1998年、防水性を実現したモーター前置き・FFシステムの小型電動リールが登場。そして2000年以降、モータの磁力アップで電動リールのパワーアップと軽量コンパクト化は段階的に進んで行きました。
またこれらと共に電動リールのドラグ性能やフリーでのスプール回転能も飛躍的に向上しています。またPEラインの強度、耐久性の進化でラインが細くなり、小さめのスプールでも糸巻き量がアップして、小型電動リールの実用性がより高まりました。
2017年に登場し、相模湾のコマセキハダ・カツオ釣りに挑む多くの釣り人に愛用されているシーボーグ800MJは、最大巻上力は約680、巻上げスピードは最速で150M/分とまさに驚異的な数値を実現した夢のような電動リールです。他メーカーのものも含め、これらハイパワー電動リールを使用して、近年、多くの釣り人が20kg、30kg級といったキハダを釣りあげています。
電動リールで釣果アップ
では電動リールはパワーがあるだけがメリットなのでしょうか。釣り初心者でもなく、体力もある私が電動リールで大物を狙い、仕留め続けるには、楽をするためではないのです。
条件によっては一日に何回もヒットする運の良い日もありますが、基本相模湾のキハダマグロ釣りで一人のアングラーが出せるヒット数は、一日に1~2,3回です。そのためヒット率を上げ、一旦ヒットした貴重な魚を逃す確率を抑え、確実に仕留めるためなのです。
電動リールのメリット:ヒット前
これはまず手返しの向上です。キハダに限らずコマセ釣りでは、最適な量とペースのコマセワークがヒットを生むためには必要条件です。
手返し向上
勿論手巻きでも出来ますが、真夏の相模湾で6時間、集中力、体力を保ち続けることは、予想以上に難しいことです。仕掛けの回収を電動で行えることは非常にメリットです。それと刺し餌が残っていない針にはけっして魚は掛かりません。
キハダを狙っていても、小さなアタリでカツオに餌を盗られてしまう場合もあります。疑わしいときは迷わず仕掛けを回収してチェックする必要があります。また電動で仕掛けを回収している間に次の刺し餌のオキアミを用意する時間も稼げます。
コマセ振り出しにも有利
そして電動リールは、コマセの振り出しにも役立ちます。二枚潮やうねりが強い時には糸フケが出やすく、手巻きでシャクってもコマセが振り出されにくい場合があります。このようなときは電動で巻き上げつつコマセを振り出すと出やすくなる場合があります。
仕掛け投入数分後、アタリ無く回収したビシに残るコマセがビシ容積の2、3割になって返ってくるようなコマセワークを探り出すとヒットする確率は高まります。
また巻き上げだけで無く、電動リールには電動だからこそ備わったカウンター機能があります。それを活用することもヒット率をアップさせます。その一つは、一度あたったタナを記憶させるメモリー機能です。
勿論カウンターはズレることがあるので毎回のタナ取りはPEラインのマーカーで行うのですが、一度アタリが出たライン長はその日のうちに、再度ヒットがでる確率が経験上とても高いのです。