サカナの大きな特徴の一つに鱗(ウロコ)がありますが、魚によって鱗の種類が異なります。また、中には鱗を持たない魚も存在するのだとか。今回は鱗の種類とその役割について調べてみました。
(アイキャッチ画像出典:Pixabay)
鱗の種類と特徴
魚の持つ鱗(ウロコ)は種類ごとに異なり、いくつかの種類が存在します。魚の種類によって身につけている鱗が異なります。
まずは鱗にどのような種類があるか、そしてどういった魚がその鱗を身に付けているのか紹介していきます。
骨鱗(こつりん)
みなさんが思い描く鱗はこの骨鱗と呼ばれる鱗であり、葉状鱗と呼ばれることもあります。
一般的に鱗と言われてイメージするのはこの種類の鱗だと思います。
骨鱗は鱗同士が、屋根瓦状に前方の鱗が後方の鱗を覆うように重なって配置されているのが特徴です。
骨鱗はさらに詳しく分類すると円鱗(えんりん)と櫛鱗(しつりん)の2種類に分かれます。
円鱗(えんりん)
全体的に丸い形をした鱗でマイワシ、サケ、アユ、コイ、メダカなどが備えています。
櫛鱗(しつりん)
露出している後方の半分がトゲ状なっている鱗で、スズキ、マダイなどが備えています。
ちなみに、ヒラメやカレイは有眼側(眼のあるほうの体側)が櫛鱗、無眼側(眼のないほうの体側)が円鱗になっているハイブリッド型です。
また、骨鱗の最大の特徴は、鱗の表面には同心円状の溝が見られる点です。
木の年輪と同じように、特定の線を数えることで年齢を推定できるのです。
硬鱗
硬鱗と呼ばれる鱗は、ハイギョなどの古代魚、ガーやチョウザメ、現代を生きるシーラカンスなどに備わっています。
骨鱗のように一枚一枚が分離しているわけではなく、鱗同士が丈夫な靭帯様の組織で繋がっているのが特徴です。
また、この硬鱗は読んで字のごとくとても硬いです。
大型のアリゲーターガーと言う魚は散弾銃で撃っても弾を撥ね返してしまうのだとか…。
一般的な魚の場合、鱗を薄くすることで、機動力を確保し、危険に対して機敏に動いて逃げるための進化をしてきましたが、古代魚などは敵から逃げることよりも敵からの攻撃を耐え切る防御力を強化するよう進化してきたようです。
楯鱗(じゅんりん)
サメなどの軟骨魚類の鱗は、楯鱗と呼ばれており、その字から分かるように、楯(たて)のような形をしています。
楯鱗は俗に言う、サメ肌であり、手で触れると非常にザラザラしています。
あまりのザラザラにお寿司屋さんでワサビをすりおろすのにも使われているくらいです。
また、楯鱗は歯と同じ構造をしており、皮歯と呼ばれることもあります。
しかし、一説によると、古代のサメは口ができるときに全身を包んでいた楯鱗が口の中に入っていき長い年月をかけて、 歯になったとも言われています。
歯と鱗が同じ形をしているのも納得できますね。
鱗の役割
鱗には様々な役割があります。
1,防御のため
前述したように、まずは外敵から身を守る役割があります。これは見た目から想像しやすいですね。
しかし、これ以外にも鱗には高度な機能が備わっているんです。
2,水流を感知するセンサー
魚を横から見てみると、鱗から尾びれに向かって1本、または2本の線が伸びています。
これは側線と呼ばれ、振動や水圧を感知するセンサーとしての役割があると言われています。
側線は魚の体の両側にあり、側線上にある鱗のことを側線鱗(そくせんりん)といいます。
魚はこの器官から振動や水圧を感知することにより、目による視覚からの情報だけではなく2つの情報によって、群れで行動する時でも互いにぶつかることなく泳ぐことが可能にしています。
また、上記の側線鱗には穴が空いていることが多く、この数を側線有孔鱗数(そくせんゆうこうりんすう)といいます。
この数は魚の種類によってそれぞれ決まっており、種の判別に大いに役立っています。
3,栄養の貯蔵庫
鱗にはさらに重要な役割があります。一枚一枚の鱗には、カルシウムなどのミネラル分が貯蔵されているのです。
魚は血液中のカルシウムが欠乏すると、自動的に鱗からカルシウムを補給するようになっています。
煮干しやししゃもなどを丸ごと食べるとカルシウムの多く摂取できるのは、骨まで丸ごと食べられるからだけではなく、鱗の影響もあるのかもしれません。また、鱗の成分にはコラーゲンも含まれているため、最近では健康食品として非常に注目され様々な鱗由来の商品が開発されているようです。
4,水分の出入りを制御
海の魚は体液の塩分より海水の塩分の方が濃いので、何もしなければ浸透圧の影響で体の水分が海水中に浸み出てしまいます。
逆に淡水魚は体液より水の塩分の方が薄いので水膨れになってしまいます。
鱗は皮膚表面からの水分の出入りを抑制することで体内の塩分濃度の変化を防いでくれます。
鱗がない魚は進化の兆し?
鱗は進化の過程から見てみると、古いものは分厚くてより頑丈です。
近代における魚の鱗を薄く軽いものへ、そして体の大きさも小さく、機敏に動けるように進化してきました。
さらに魚の中にはすでに鱗のない種類もおり、ウナギやナマズ、ドジョウ、あるいはタチウオなどがすでに鱗を持っていません。
彼らは鱗を無くす代わりに、体の表面に大量に粘液を分泌することで同じように体を守っています。
そして、魚類から進化した両生類にも鱗はありません。もしかしたら、今後発見される新種の魚には鱗がないものが増えてくるかもしれません。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>
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