見た目と似ているウナギとアナゴ。値段の高いウナギと、比較的安価なアナゴですが、どうしてアナゴはウナギの代替品になれないでしょうか。
ウナギとアナゴの違い
見た目からわかるうなぎとあなごの違いを比較してみましょう
【黒くて、ニョロっとししている】
そんな抽象的なイメージで区別のつかない人も多いと思いますが、よくよく調べてみると、意外と多くの違いが見えてきます。
からだの色
同じような見た目ですが、実はよく観察すると体の色は違います。
ウナギは黒い体色をしているのに対し、アナゴは薄い茶色をしています。
天然物のウナギも色は薄くなっていきますが、金色と表現されることが多いです。また、アナゴの体の側面には白い斑点が一列に並んでいます。
判断が難しい場合は、この斑点に注目するといいでしょう。
生息している場所
見た目が似ている2種類ですが、生息している場所は全く異なります。
ウナギは降河性の回遊魚(海で産卵し、ふ化した後に淡水域に遡上して河川や湖沼で成長する魚)であるのに対して、アナゴは海水魚(その一生を海で過ごす)です。
したがって、基本的には、川や湖でアナゴが獲れることはあり得ません(一部地域の河口周辺を除く)。
また、ウナギは大きくなるまでに10年近くかかるのに対し、アナゴは5年ほどで成魚になります。
この成長スピードの差も流通量に大きく差が出ているようです。
栄養素を比較
では、両者に含まれる食品成分や味についてはどのような違いがるのでしょうか。
まずは食品成分について表にしてみます。
ウナギの蒲焼(100g) | 蒸しアナゴ(100g) | |
エネルギー | 293kcal | 194kcal |
水分 | 50.5g | 68.5g |
タンパク質 | 23.0g | 17.6g |
脂質 | 21.0g | 12.7g |
日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ここでは両者の明暗がはっきりと分かれる結果となりました。
両者を食べたことがある人はわかるかと思いますが、ウナギはこってり”とした味がするのに対し、アナゴは“さっぱり”とした味をしています。
これは、ウナギに近く含まれる脂質に起因していると予想されます。また、味については、タンパク質を構成するアミノ酸が大きく関わっています。
タンパク質に注目すると、ウナギの方が含有量が多い為、相対的に見てもアナゴに比べて、ウナギの方がアミノ酸が多く旨味が多いと言えるでしょう。
ちなみに農林水産省的には、ウナギとアナゴは食品としては同じ扱いで、脂肪分が多いか少ないかの違いだけのようです。
それぞれに合った食べ方
科学的に見てもウナギの方が美味しいと判断されがちですが、昔の人はそれぞれに合った調理法を良く知っており、食べ方を工夫することにより両社を美味しく食べてきました。
両者の違いは何といっても脂の量ですが、代表的な調理法ではこの脂の違いが考慮されています。
ウナギは焼くことで余分な脂を取り除き、アナゴはたんぱくな味わいを補うために、ふっくらとタレで炊いて食感と味を補ったり、てんぷらにして脂肪分を補っています。
アナゴはアナゴとして楽しもう
脂の量が違うウナギとアナゴでは、価格の高いウナギの代用にアナゴを使用するのは今現在は難しそうです。
しかし、養殖技術も進化してきており、遠くない未来には、脂のたっぷりのったブランド魚のアナゴが食卓に並ぶようになるかもしれません。
そうなればアナゴがウナギに負けているなどとは言われなくなるでしょう。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>