雨の日が続き、少し憂鬱になる季節と言えば『梅雨』。でも、この季節はサカナたちにとって、さらには魚を食べる日本人にとっても大事な季節なんです。梅雨が旬の魚と併せて紹介します。
梅雨ごろに旬を迎える魚たち
日本ではほとんどの地方が6月頃から梅雨に入ります。ジメジメとした日々が続きますが、この季節はサカナたちにとて、さらには魚を食べる日本人にとっても大事な季節なんです。
島国である日本は、四方を海に囲まれ、多種多様な魚を年間通して水揚げすることができます。そして、水揚げされる魚たちにはそれぞれに旬があり、梅雨時に旬を迎える魚もたくさんいます。
梅雨ごろに旬を迎える魚たちは『梅雨の水を飲む』『梅雨の水を飲んで美味しくなる〇〇』と表現されます。
『梅雨の水を飲む』の由来
当然ながら、雨水を飲んで美味しくなることはなく、この表現はあくまでも比喩表現です。
長雨によって多くの栄養が山から流れ出し、その栄養をもとに植物プランクトン、動物プランクトンが増殖します。
動物プランクトンはシラスなどの小魚などの餌となり、これらは更に大きな魚に補食されていきます。
一方、増殖しすぎた植物プランクトンは死滅すると海底に沈殿していき、付着性の生物や貝類やゴカイの仲間などの栄養物質として消費されていきます。
そしてこれらの小生物もまた、より大きな生物に補食されていきます。
「梅雨の水を飲んで美味しくなる」という言葉は、梅雨のまとまった雨水によって栄養が海に供給され、その影響からより高次者である魚が大きく成長し、人間たちがそれらの魚を美味しく頂くという背景から生まれてきた言葉なのです。
こういった食物連鎖のサイクルを季語を交えて「梅雨時期に入る頃に最も美味しくなる = 梅雨の水飲んで」と表現したことが由来のようです。
入梅イワシ
では梅雨の時期に旬を迎える魚にはどのような種類の魚がいるのかご紹介します。
梅雨時に旬を迎える魚はいくつかいますが、『イワシ』『イサキ』などは特に美味しい時期です。
地域によってはブランド化されており、梅雨ごろに千葉県の銚子港で水揚げされるイワシは『入梅(にゅうばい)イワシ』と呼ばれ、通常よりも高値で取引されています。
産卵前で脂が非常にのっており、一年を通して最も美味しく食べられます。
梅雨イサキ
また、イサキも同様に梅雨の時期の産卵を控えて脂がのって美味しく食べられます。
この時期のものは「梅雨イサキ」と呼ばれています。
特に長崎県の大瀬戸のイサキは、この脂のノリに加え、透き通るような白い身質にハリのある魚体が特徴的で『せと一先』という名でブランド魚として扱われています。
ハモ(鱧)
関西方面で梅雨に美味しくなる魚の代表がこのハモ(鱧)。
脂が乗る冬の旬とは異なり、「梅雨の水を飲んで育つ」夏の旬はサッパリした味わいが特徴のようです。また、全身に小骨があるこの魚を美味しく食べるために「骨切り」という下処理法が生まれたことも有名です。
生命力がとても強く、活かしたまま長距離移動が出来たことから京都の料理人に重宝され、祇園祭にはかかせない食材に。同祭りのことを「ハモ祭り」と呼ぶことさえあるようです。
梅雨だからと気持ちを落とさない
梅雨になると雨で外出や運動もできず、気分も上がらないことが増えるかと思います。
しかし、漁業や農業については、梅雨は恵みの雨だということを思い出してみてください。
お家にいてもご飯は美味しく食べられます。
梅雨の水を飲んだ美味しい魚を食べて、気分を上げていきましょう!
<近藤/TSURINEWS・サカナ研究所>