我が国では誰もが知る魚で、かつては本当に身近だったにもかかわらず、今や絶滅の危機が迫っているものがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「ドジョウが出てきてこんにちは」
ある程度以上の年齢で「どんぐりころころ」という童謡を知らないという方はきっといないでしょう。木から落ちて転がるどんぐりの顛末をユーモラスに歌ったものです。
そしてこの童謡に登場する魚が言わずと知れた「ドジョウ」です。コイ目ドジョウ科に属する魚で、細長くニョロっとした小さなシルエットは親しみ深く、童謡に登場する理由もわかります。
ドジョウ(提供:PhotoAC)この歌では「お池にはまったドングリ」の前に登場するので、基準種のドジョウだと思われます。これ以外に河川中流に棲息するシマドジョウや、上流に棲息するアジメドジョウなどが知られています。
今や絶滅危惧種!?
童謡に登場するということは、ドジョウという魚がそれだけ身近な存在であったことが示唆されます。実際、多くの大人はきっと子どもの頃に一度や二度ならず見たことはあるかと思います。
しかしそんなドジョウ、実はいまや絶滅危惧種と呼んでも差し支えない状態になってしまいました。その理由は「棲めるところがなくなった」から。
飼育されるドジョウ(提供:PhotoAC)かつて我が国ではドジョウが棲息する「水の流れが穏やかな浅い場所」が、田、用水路、ため池、池沼などいくらでもあったのですが、営農技術の進化や作物の転換などによりこれらが失われてしまったのです。
ときに街中のドブや公園の池などでドジョウの仲間が観察されることがありますが、これは大部分が中国由来の外来種である「カラドジョウ」であると見られています。
昔は日常食だった
もし我が国からドジョウがいなくなれば、かつて生態系の一角を成した生き物が消えるという点で環境へのダメージは大きいでしょう。しかし、それと同じように無視できないのが「食文化へのダメージ」です。
ドジョウはかつて身近な食材であり、各地の食文化と深く結びついてきました。今でも東京の下町や瀬戸内沿岸などでドジョウを使った料理が食べられており、浅草には有名なドジョウ料理専門店があります。
東京風ドジョウ鍋(提供:PhotoAC)そのため文学や演劇などにも登場し、我が国の文化そのものと切っても切れない関係といえる存在なのですが、ドジョウの消滅と合わせてこのドジョウ料理、食文化もまた消えていきつつあります。近い将来、誰もドジョウを食べることができなくなり、そしてドジョウを食べていた記憶すら無くなっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

