前回の「ニジマスの品種改良と見分け方について 実は種類たくさん(第6回」ではサケマスの品種改良について説明した。今回は人工交雑種の種類を説明していこう。
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自然界での交雑
サケマスの異種間交配による品種改良も盛んに行われている。
交雑は自然界においても発生する。
とくに、ブルックトラウトは多くの種との交雑が可能で、移入された河川では、在来のイワナ類との交雑種が世界各地で報告がある。日本でも、日光の湯川水系、上高地の梓川上流域、北海道の空知川水系などで確認されている。
自然界では属内近縁種に限られ、また、産卵期が異なる種間の交雑は発生しない。
だが、人工交雑では、いくつもの品種が作られている。よく知られているのが、ブラウントラウトとの交配種・タイガートラウト、レイクトラウトとの交配種・スプレイクだろうか。
サケマスの人工交雑
人工交雑は、ブルックトラウトに限らず、食用として、また釣りの対象として、様々な種のかけ合わせが試され生産されてきた。そのなかで、母体としての中心は養殖が容易なニジマスだ。しかし、すべての異種交雑が有効であるとは限らない。かけ合わせによっては致死性の雑種を生じ、受精卵が孵化しなかったり、幼魚期に突然死する。
例えば、ニジマス(雌) ✕ イワナ(雄)は生存性を示すのに対し、イワナ(雌) ✕ ニジマス(雄)は致死性を示す。同じかけ合わせであっても、雌雄が変わると致死性の雑種となることも多い。
また、冷凍技術の発達により精子が長期保存できるようになったことで、産卵期の異なる種間の人工交雑も可能になってきた。最近では、春先に産卵期を迎えるイトウも人工交雑の母体として研究が行われており、秋に産卵期を迎えるカラフトマスやシロザケとの人工交雑も行われている。
人工交雑による品種
ここで、人工交雑によるメジャーな品種を紹介しよう。
ロックトラウト
ロックトラウトは、ニジマス(雌)×アメマス(雄)の全雌異種三倍体で、食用に改良された品種だが、引きが強く、今では管理釣り場のメインキャストとなっている品種だ。
信州サーモン
信州サーモンは、ニジマスの体色にブラウントラウトの柄の容姿。病気に強く成長の早い品種で、海のない長野県における養殖事業の目玉だ。
冨士の介は、養殖の簡単なニジマスと脂が多く美味とされるキングサーモンをかけ合わせた品種で、2022年の出荷を目指して生産が開始されたばかり。両方の品種は海のない山梨県水産技術センターが手掛けた人工交雑種だ。
また、人工交雑の際は養殖魚が自然界に逃げ出し、さらなる交雑個体が生じないよう、不妊化処理を施した生殖能力を持たない全雌三倍体とすることが多い。
その他の人工交雑種
他の人工交雑種としては、次のような品種がある。
・タイガートラウト = ブラウントラウト(雌) ✕ ブルックトラウト(雄)
・ジャガートラウト = イワナ(雌) ✕ ブルックトラウト(雄)
・スプレイク = ブルックトラウト(雌) ✕ レイクトラウト(雄)
・パールトラウト = ブラウントラウト(雌) ✕ ヤマメ(雄)
・ロックトラウト(魚沼美雪マス) = ニジマス(雌) ✕ アメマス(雄)全雌異種三倍体
・絹姫サーモン = ホウライマス(雌) ✕ アマゴ(雄)(イワ(雄))全雌異種三倍体
・信州サーモン = ニジマス四倍体(雌) ✕ ブラウントラウト(雄)全雌異種三倍体
・富士の介 = ニジマス(雌) ✕ キングサーモン(雄)全雌異種三倍体
管理釣り場では、タイガートラウト、ジャガートラウト、ロックトラウト、絹姫サーモンなどが放流されている。これらは、両方の親の特徴を合わせ持ったり、打ち消し合ったりしているので、見た目にも違いがあり、素人でも識別可能だ。
また、食用として改良された品種は、見た目がグロテスクであっても食べて美味しいので、キャッチ&イートがお勧めだ。
<週刊つりニュース関東版 APC・藤崎信也/TSURINEWS編>