6年前、伊是名島で出会った一人の海人がいる。彼はもずく漁師で、冬になると決まってこう言った。「今、アオリがいい」それは近況報告でも、世間話でもなかった。伊是名島へ来い、という合図だった。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター杉浦永)
もう一つの醍醐味「もずく漁」
冬の伊是名島でもう一つ忘れられないのが、もずく漁だ。夜明け前、まだ暗い港に立つと、空気は冷たいがどこか心地よい。
もずく漁へ(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター杉浦永)海に入ると、一面に広がるもずく畑。波の音と、もずく吸い上げ機の作業の音だけが響く。彼は黙々と作業を続ける。釣りの時とは違う、仕事人としての海人の背中がそこにあった。
もずく漁場(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター杉浦永)採れたてもずくの美味しさ
作業のあとに食べた採れたてのもずくは、驚くほど美味しかった。余計な味付けはいらない。伊是名島の海の恵みを、そのまま口にしているようだった。
採れたてのもずく(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター杉浦永)鳴らない電話
去年の春から、あの港は少し静かになった。冬になっても、あの電話は鳴らない。それでも港の景色は何も変わらない。
静かになった港(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター杉浦永)別れ際、彼は多くを語らなかった。多くを語る人ではなかったし、いつものことだった。それでも彼の口癖が心に残る。「いちゃりばちょーでー」出会えば皆兄弟。その時はただ、伊是名島の海と同じように、その言葉が静かに胸に残った。
伊是名島の海(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター杉浦永)冬になると、その言葉とともに伊是名島を思い出す。アオリイカが差す浅場。もずく畑の向こう側、そして港で一服する彼の姿。言葉を交わさなくても繋がっている。そう思える出会いだった。
伊是名島への思い
釣りが特別な遊びではなく、暮らしの一部としてそこにある島。伊是名島は、そんな場所だった。
一人の海人と(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター杉浦永)アオリイカと、もずくと、そして一人の海人。この島で過ごした冬の記憶は、これからも静かに筆者の心の中に残り続ける。また、帰りたくなる。伊是名の海は、いつでもそう思わせてくれる……。続く。
<杉浦永/TSURINEWSライター>
伊是名島

