奇妙な見た目&特異的な深海ザメ『ラブカ』の魅力 生体・標本が見られる場所とは?

奇妙な見た目&特異的な深海ザメ『ラブカ』の魅力 生体・標本が見られる場所とは?

「ラブカ」は曲名になったり、怪獣のモデルとされたりと、その名は深海魚の中でも有名です。一方、本種は水族館などで展示されることがほとんどなく、現物を見たことがない人も多いのではないでしょうか。大学時代に海洋生物を学び、深海魚やサメの研究会にも所属していた筆者が、そんなラブカの魅力やラブカを見られる場所をまとめました。ぜひ、ラブカに詳しくなって生体や標本を見る目を変えたり、ちょっとした知識を自慢できるようになったりしちゃいましょう。

【『サカナト』で読む】

(アイキャッチ画像提供:水羽陽凪)

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サカナト編集部

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ラブカとは

ラブカ(学名:Chlamydoselachus anguineus)は、水深約500~1000mに生息する深海ザメで、体長は2mほどです。

深海に生息していますが、底曳網やサクラエビ漁、刺し網などで混獲されることもあります。

体形やエラ、歯の形などが3億6千万年前に繁栄していたサメ「クラドセラケ」に似ており、“生きた化石”と呼ばれています。

ラブカが持つ<2つの魅力>

パッと見ただけでは怖い印象を抱かれがちなラブカですが、よく観察すると他のサメにはない面白い特徴がたくさんあります。

その中でも特にわかりやすく魅力的な部分を2つご紹介します。

フリルのような鰓弁

ラブカの魅力ひとつ目は、赤いフリルのように見える鰓弁(さいべん)です。

奇妙な見た目&特異的な深海ザメ『ラブカ』の魅力 生体・標本が見られる場所とは?異形の鰓弁(提供:水羽陽凪)

鰓弁とは、魚のエラにあるクシのような部分で、酸素と二酸化炭素を交換する役割をもちます。

通常の魚の鰓弁はエラの中に隠れて外からはあまり見えませんが、ラブカの鰓弁はヒダのように伸びており、エラから少しはみ出ています。泳ぐとひらひらと揺れるその様子は、顔の怖さを忘れるかわいさです。

その特徴的なエラから、英名は「Frilled Shark」と付けられています。また、鰓孔の数も多くのサメが5対であるのに対し、ラブカは6対あり、エラ全体がラブカだけの特別なものになっています。

三つ叉の歯

ラブカの魅力2つ目は、フォークのように三つ叉に分かれた歯です。

歯の先は鋭く尖っており、少し内側に傾いています。このような歯の形をもつサメは現代で他におらず、「エサの少ない深海で、出会った獲物を逃がさない」という執念を感じさせられます。

奇妙な見た目&特異的な深海ザメ『ラブカ』の魅力 生体・標本が見られる場所とは?これが歯とは(提供:水羽陽凪)

また、サメの仲間全体がもつ特徴として歯の本数の多さがあり、ラブカの歯も約300本ほどあると言われています。

歯の先が分かれていることで、実際の本数よりもさらに多く見えるため顔の怖さが際立ち、深海の覇者のような風格を感じますね。

実際にラブカを見られる場所は?

百聞は一見に如かず──。ラブカが泳ぐ姿を見てみたい方も多いと思います。

では、どこへ行けばラブカを見ることができるのでしょうか。ラブカが見られる可能性のある場所を2つご紹介します。

全国各地の水族館

まずは水族館です。

生体が見られるのは激レアですが、過去に沼津港深海水族館シーラカンス・ミュージアム(静岡県沼津市)や登別マリンパークニクス(北海道登別市)では展示実績があります。

しかし、これまで水族館で生体が展示されたケースでは数日で亡くなり展示が終了することが多いため、今後展示される機会があったら見逃さないようにしましょう。

一方、生体ではなく標本が展示されることはしばしばあります。

標本の方がエラや歯の特徴をじっくり観察できるため、機会があればぜひ見てみてください。過去には、新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)で「毎日深海生物タッチ」という標本に触れるイベントも開催されていました。

沼津市の「深海魚まつり」

筆者はかつて、深海魚の聖地と言われる静岡県沼津市戸田で開催された「深海魚まつり」でラブカを見たことがあります。

残念ながら既に亡くなっていましたが、ラブカを触ったり抱えたりすることができました。毎回展示される魚が異なることからラブカに会えるかは運次第ですが、ラブカ以外にも珍しい深海魚がたくさん見られるため、深海魚が好きという人にはおすすめのイベントです。

なお、戸田市では「深海魚まつり」以外にも深海にまつわるイベントがよく開催されており、深海魚活用推進協議会のサイトでは様々な情報が発信されています。

現物を見ると見え方が変わる

深海ザメ「ラブカ」の魅力を少しは感じてもらえましたか?

名前だけ知っている状態で生体や標本を見るのと、ラブカの知識を入れた状態で見るのとでは、見え方がガラッと変わってきます。もし見られる機会があればぜひぜひ足を運んでみてくださいね!

【『サカナト』で読む】

<水羽陽凪/サカナトライター>

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