毒魚でもあり、人気の食用魚でもあるという不思議な魚バラフエダイ。実際に食べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
有名な毒魚・バラフエダイ
我が国で「食べてはいけない毒魚」といえばなんでしょうか? おそらく多くの人がフグの名を挙げるのではないかと思います。
しかしフグは温帯付近に適応した魚であり、南の方に行くと少なくなっていき、利用もされなくなります。このような地域ではまた別の魚が毒魚として恐れられています。
トラフグ(提供:PhotoAC)そのような「南の毒魚」でよく知られたものの一つに「バラフエダイ」という魚がいます。この魚はシガテラという毒を体内に含有しており、食べると体に様々な不調が現れます。
地域によっては人気食材
このシガテラにあたると、しばしば「ドライアイスセンセーション」という不思議な症状が現れます。これは神経の異常であり、温かいものを触るとまるで氷に触れたときのような痺れやショックを感じるというものです。
他にも死亡例こそほとんどないものの、体調不良や消化器異常など様々な症状が現れ、長いとひと月以上も続いてしまうことがあります。しかしそんな恐ろしいシガテラ毒を持つバラフエダイですが、実は食用にする地域もあります。
バラフエダイの刺身(提供:茸本朗)筆者は先日、友人が釣り上げたバラフエダイを貰い受け、刺身で食べてみました。中毒症状が現れないようごく少量、味見のつもりで食べてみたのですが、柔らかくしっとりとした上質な白身にしっかりとした脂が乗り、大変美味でした。味だけで言えば、人気食材になる理由はすぐに分かります。
どこに違いが?
バラフエダイを好んで食べる地域の人達はシガテラに耐性があったりするのかというと、別段そういう事はありません。実はシガテラはそもそも「ある地域とない地域がある」のです。
バラフエダイ(提供:PhotoAC)シガテラは、植物プランクトンの一種である渦鞭毛藻類という生物が作り出し、食物連鎖の流れの中でバラフエダイの体に蓄積します。しかしシガテラを産出する渦鞭毛藻類は分布する地域としない地域があり、いない場所では当然シガテラが生み出されません。そのような場所のバラフエダイは無毒であり、ただの「食べて美味しい魚」なのです。
我が国では南西諸島付近でシガテラ中毒事故がよく発生している一方で、同じ緯度でも小笠原諸島周辺ではシガテラ中毒が発生していません。そのため小笠原ではバラフエダイは食用魚として愛されています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>


