初心者が手軽に行ける釣り場として利用されてきた管理釣り場。それが、エリアゲームの発展とともに、釣りの一つのカテゴリーとして確立した。しかし、いまだにサケ・マス類における間違った情報がネット上に氾濫している!そこで全8回に渡ってサケ・マスの違いについて解説していこう!
日本でのサケとマスの違い
本来、日本で降海するのは、シロザケとサクラマス(サツキマスは亜種)の2種のみだった。昔はサケとマスの2つの呼び名があればよかったのだ。
ところが、蝦夷地開拓に伴いカラフトマス、遠洋漁業の発展に伴いベニマス、ギンマス、マスノスケと魚種が増えた。
当時は、シロザケをサケ、それ以外は前述のように修飾を付けて〇〇マスと呼んだ。ところが、サケの商品価値が高いことから、いつしかベニザケ、ギンザケとサケを付けて呼ぶようになる。
サケとマスの定義が曖昧になった瞬間だ。
イワナも同様で、日本にイワナは1種のみ(ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴキは亜種、キリクチはヤマトイワナの地域型)だったが、オショロコマとエゾイワナ(アメマスは降海型)が登場する。
トラウトフィッシングの聖地英国での違い
一方、イギリスでも同様のことが起こる。
本来、「サーモン」とは、イギリスに分布しているアトランティックサーモン1種であり、「トラウト」とは同様にイギリスに生息するブラウントラウトを指した。
大航海時代に入り、英語圏がアメリカ大陸まで拡大、更に太平洋にまで達すると、その定義が崩れた。英国にいないサケ・マス類が次々に英語に組み入れられることになる。
それまで、チャーと呼んできたイワナ属にもトラウトが適用される(レイクトラウト、ブルックトラウトが有名)など、英語でも曖昧になった。
その後、明治期に サーモンをサケ、トラウト をマスと翻訳し、すべての個体が降海する種をサーモン、一部またはすべての個体が河川残留する種をトラウトと定義づけしてしまった。
この定義がイギリスに逆輸入されたことで、さらに曖昧さが加速。
本来であれば、サケはシロザケ、マスはサクラマス、サーモンはアトランティックサーモン、トラウトはブラウントラウトなのである。
4つの名前は、すべて違う種に与えられた名前なのだ。それが今では、呼び名すべてが大混乱を極めている。
本来はイワナ属であるレイクトラウト、ブルックトラウトは、レイクチャー、ブルックチャーと呼ばれるべきだったのだ。
品種改良でさらに複雑に
サケ・マス類の品種改良に伴い、分類学上に出てこない品種が登場し、「サーモントラウト」や「トラウトサーモン」なる魚名まで現れた。
日本では品種改良された魚が地域ブランドとして、〇〇サーモン、〇〇マスとして商品登録されたことも混乱に拍車をかけている。
また、エリアゲームが確立したことで、フィッシングエリアと呼ばれる管理釣り場に放流されている魚種は、イトウやイワナ属、品種改良された魚を含めてトラウトと呼ばれるようになったこともその一端を担っている。