あまりにも派手なヒレと、その中に隠した毒針で知名度の高い「ミノカサゴ」。いわゆる未利用魚のひとつですが、食べるとなかなか美味しい魚です。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
派手な毒魚『ミノカサゴ』
派手な魚の定義は色々あると思いますが、そのヒレの派手さという点で考えると「ミノカサゴ」に叶うものはあまりないかもしれません。
ミノカサゴは近縁のハナミノカサゴとともに日本近海の広い範囲に生息し、水族館でも馴染みのある魚です。メディアに取り上げられることも多いので、名前は知らなくても見たことがあるという人は多そうです。
和名は、全身を覆うヒラヒラした皮弁を簑笠に例えたもの。英語圏ではライオンフィッシュと呼ばれているようです。このヒラヒラの下に毒針を隠し持っており、ダイビングでは人気の魚でもありつつ「注意すべき魚」としても扱われています。
その毒性とは
ミノカサゴの毒性は古くからよく知られており、生き物図鑑の有毒生物ページにはまず間違いなく記載があります。背ビレと腹ビレ、尻ビレの一部に毒腺があり、刺されるとかなり強く傷みます。
広島ではこの魚をナヌカバシリと呼び、これは刺されたときのあまりの傷みから7日間走り回ってしまうほどだという話に由来するそうです。
ミノカサゴ類の毒成分はしばしばタンパク質だと言われますが、実際は様々な成分の混合物なのだそうです。ただ、他の刺毒魚の毒と同じように刺された部分を暖めると痛みが和らぐ傾向があります。もし刺されてしまったら、ギリギリ我慢できるくらいの熱さのお湯を用意し、患部を漬けながら病院に向かうのが良いでしょう。
実は食べても美味しい!
そんな危険な魚であるミノカサゴですが、食べるとなかなか美味しいということはあまり知られていません。名前からも分かる通りカサゴの仲間(フサカサゴ科)であり、この仲間に含まれる多くの食用魚と同様、様々な調理法で食べることができます。
ミノカサゴ類を美味しく食べるためにはひとつ、大切なことがあります。それは「水分を抜く」ということ。ミノカサゴの身は水分が多く、そのまま食べるとやや淡白に感じます。しかし水分を抜くと、本来の旨味や歯ごたえの良さが引き立ち、ほかのカサゴ類にも負けない味になります。
塩焼きにする場合は塩をなじませてから1時間ほど置く、あるいは軽く干してから焼くのがおすすめです。また煮付けにするときも少し干して水分を抜いたもので作るとより美味しくなります。個人的には3枚に下ろし、塩をしてキッチンペーパーにくるみ、1日かけて水分を抜いてから湯霜造りにして食べるのがもっとも美味しいと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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