淡水の高級魚「ホンモロコ」で世界初の大発見 コイ科魚類初の産卵回帰を確認

淡水の高級魚「ホンモロコ」で世界初の大発見 コイ科魚類初の産卵回帰を確認

小魚ながら「淡水魚の中でもっとも美味しい」と称賛されるホンモロコ。最近の研究でとあるユニークな生態を持っていることが判明し、話題となっています。

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琵琶湖が誇る高級魚ホンモロコ

海水魚と比べると食用としてはマイナーな淡水魚。中でもコイやフナのような「コイ科の魚」たちは地域によっては重要な食用魚ではあるものの、全国的には食材としてのイメージはあまりないようです。

しかし、そんなコイ科に所属する魚、しかもコイやフナと比べると遥かに小さい魚でありながら、高級魚としての地位を確かなものにしている魚があります。それはホンモロコ。

淡水の高級魚「ホンモロコ」で世界初の大発見 コイ科魚類初の産卵回帰を確認ホンモロコ(提供:PhotoAC)

この魚は、骨や鱗が柔らかくて脂乗りがよく、焼くと自分の脂で揚げ焼きのようになりまるごと食べることができます。今では各地で養殖されるようになっていますが、もともとは琵琶湖の固有種であり、同湖でもっとも高級な魚のひとつです。

「産卵回帰」をすることが判明

そんなホンモロコの生態について、先日とある大発見があり、論文に発表され界隈の注目を集めました。その発見とは、彼らが「産卵回帰」を行うことがわかったというもの。

産卵回帰とは、とある場所で生まれた魚が成長に伴って他の場所へ移動したのち、再び自分の生まれた場所に戻って繁殖活動を行うことです。

淡水の高級魚「ホンモロコ」で世界初の大発見 コイ科魚類初の産卵回帰を確認ホンモロコの煮付け(提供:PhotoAC)

ホンモロコは琵琶湖に接続する小さな水域(内湖と呼ばれる)やその周囲の水田で孵化し、琵琶湖内を大きく回遊します。今回の研究では、標識を付けたホンモロコの仔魚を、琵琶湖有数の内湖である西の湖沿岸の水田で放流し、成長に伴ってどのように移動するかを観察しました。

その結果、ある程度成長した仔魚たちは夏場に西の湖から本湖に移動して成長し、その後西の湖から20kmも離れた本湖の深いところで越冬し、春になると再び内湖に戻って産卵を行いました。この際、他の内湖よりも、彼らが生まれ育った西の湖においてより高い確率で標識個体が採取されたために「産卵回帰が行われた」という結論に繋がったのだそうです。

産卵回帰が確認されたのはコイ科史上初

さて「ある魚が、産卵にあたり生まれたところに戻る」と聞くと、少なからぬ人が「それって珍しいの?」と思うかもしれません。というのも、我々はいくつかの魚で産卵回帰が行われることを知っているためです。

そのような魚の代表がサケでしょう。サケは川で孵化すると海に下り、数年の間回遊しながら成長し、再び生まれ故郷の川に戻って産卵します。このことは日本人なら常識のひとつであり、そのために今回のホンモロコに関する発見についてもいまいち凄さが伝わっていないように思います。

淡水の高級魚「ホンモロコ」で世界初の大発見 コイ科魚類初の産卵回帰を確認ホンモロコの唐揚げ(提供:PhotoAC)

ではなぜ今回の研究結果が注目されたのか、それはホンモロコが「コイ科の魚」であるためです。コイ科の魚はそもそも定着性が強く、成長に伴って回遊することがあまりありません。ホンモロコは、内水面でありながら海のように大きく様々な環境を持つ「琵琶湖」という環境に適応したために、他のコイ科魚とは異なる生態に進化したのかもしれません。

また、ホンモロコは高級魚であるために、資源量を維持する必要性もあります。放流事業などを行うにあたり、その生態が判明したことはとても大きなことで、この研究が今後役立つ可能性は高いでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>