昆布(コンブ)の水揚げが減る一方 ダシを取るための代用品としてワカメはアリ?

昆布(コンブ)の水揚げが減る一方 ダシを取るための代用品としてワカメはアリ?

近年、資源量減少が叫ばれているコンブ。もしコンブがなくなったとして、ワカメで同じように出汁を取ることはできないのでしょうか?

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その他 サカナ研究所

水揚げが減る一方のコンブ

「昆布だし」の原料として、あるいはそのまま調理される食材としても、日本の食卓に欠かせない海藻・コンブ。しかしいま、このコンブの資源が大変な危機にさらされていることをご存知でしょうか。

昆布(コンブ)の水揚げが減る一方 ダシを取るための代用品としてワカメはアリ?コンブ(提供:PhotoAC)

コンブの最大産地である北海道では、90年代末期は年間3万tほど水揚げされていたものが、近年ではその半分以下にとどまっています。天然のコンブがほとんど獲れなくなり、養殖コンブでなんとか需要を賄っているところもあります。

コンブの不漁には、海洋温暖化が大きく関わっていると考えられています。現在のスピードで海水温が上昇し続けると、2090年頃には我が国におけるコンブの生息面積は、80年代のそれと比べて0~25%にまで減少するという研究結果も発表されています。

ワカメで出汁はとれないの?

もし将来、コンブが全く採れなくなってしまったとしたら、一体どうやって和風だしを取ればいいのかと不安になる人はきっと少なくないでしょう。しかし中には「コンブがないならワカメを使えばいいのでは?」と考えるような方もいるかも知れません。

実際に、ワカメでだしを取ることはできるのか。ネット上でも様々な人がこれについて考察していますが、多くの方が「NO」と答えています。実際、市販のワカメを使ってだしを取ろうとしても、昆布だしのように美味しくすることは難しい場合が多いです。

昆布(コンブ)の水揚げが減る一方 ダシを取るための代用品としてワカメはアリ?海中のワカメ(提供:PhotoAC)

これはひとえに、市販されているワカメの多くが「加熱済み」であるため。パックの乾燥ワカメや塩蔵ワカメはいずれも、変質を防ぐために一度熱湯にくぐらせており、そこで旨味成分が落ちてしまっているため、そこから再度煮ても良いだしは取れません。

加えて、もとよりワカメはコンブのように旨味成分を抽出するのが難しく、汁に旨味を抽出するよりも、そのまま食材として食べて旨味を楽しむ方が向いているのだそうです。

ワカメで出汁をとる方法

それでは、ワカメからだしを取るのは不可能なのかというと、決してそんな事はありません。実際、生のワカメの中にはコンブに負けないほどの旨味成分が含まれており、それを抽出すればちゃんと美味しいだしが取れます。

しかし、前記の通りワカメは普通に煮てもだしを取ることはできません。そこで用意するのは「非加熱加工」の「乾燥ワカメ」です。水揚げされたワカメをそのまま干し上げたものが最良です。干すことでワカメの細胞が壊れやすい状態になり、水煮にするだけでしっかりだしが出てくれるのです。

昆布(コンブ)の水揚げが減る一方 ダシを取るための代用品としてワカメはアリ?干しワカメ(提供:PhotoAC)

ワカメのだしはコンブのそれと比べると、やや磯の香りが強めで繊細さに欠けますが、濃厚で力強く、煮物などに使うと魅力的です。海鮮と合わせるとその魅力がより立つのでオススメです

<脇本 哲朗/サカナ研究所>