魚を食べる動物たちは、おしなべて「食べてもあまり美味しくない」という特徴を持っています。いったいなぜでしょうか。
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魚を食べる動物は美味しくない?
最近のジビエブームもあり、現在我が国では様々な野生動物が食用にされています。その種類は両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類など様々ですが、その中でも「食べやすい」と言われて人気のあるものには、共通するひとつの特徴があります。
それは「魚を主食としていない」ということ。多くが植物食性で雑食性や純肉食性のものは少なく、魚食性のものはほとんどありません。
魚食性のもので今も食用にされているものにはイルカ、ツチクジラなどのハクジラ類やトドなどの海獣類がありますが、いずれもクセの強さから広く親しまれてはいません。
魚を食べる魚は美味しい
これとは対照的ですが「魚を食べる魚」には、美味しいものが多いことが知られています。
マグロやヒラメなどはいうまでもなく高級魚ですし、タイやアジなどの一般的な食用魚も大きくなると魚食性が強くなります。
面白いことに、魚の場合は植物食性、とくに海藻類を好んで食べる魚は臭みがあり、美味しくないとされがちなところがあります。食性という面で切り取れば、魚と肉の食味評価は真逆といえます。
その理由は「脂」
なぜこのようなことが起こるのか。最大の理由は「脂」にあります。
ある生き物を食材として見た時、その風味はその生き物が持つ脂肪分に大きく左右されます。その生き物が食べた物の中に含まれている脂肪が、その生き物が自体の脂肪として蓄積されるのです。
魚を食べる動物は、DHAやEPAといった魚の脂肪分を己の脂肪として溜め込みます。これらの「魚油」には強い魚臭さがあり、結果としてこれを食べた動物の脂肪からも魚臭さの要素を感じられるようになります。
魚が多少魚臭くても、魚を食べ慣れた我々には気になりません。しかし「肉が魚臭い」となると、どうしても違和感として捉えてしまいがちです。
結果として、魚を食べる「魚以外の生き物」は臭いと感じてしまい、食用にされにくいのではないかと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>